君と僕
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春もうらら
桜は満開
桜吹雪が舞い上がるというより、砂ぼこりの舞う春は
「あー風強ぇー。誰だよ、屋上で弁当食おうなんていいだしたのは」
育ち盛りの少年たちにとって、少しも腹の足しにならない。
時折吹く風を欝陶しく感じながら弁当を食べていた眼鏡の彼――塚原要は苛立ちを隠す事なく文句を呟いた。
それに対し反論したのは共に髪の長い、少年と少女だ。
「言い出しっぺは春ちゃんだけどー…別によくない?風くらい」
「そーですよ要くん。天気いいのに教室じゃもったいないじゃないですか」
「おかず砂まみれになる方がもったいねーっつの!」
少女――名字無しさん名無しさんと少年――松岡春はねーっと顔を見合わせて笑い合う。
だが、要はやはり気に入らないようで更に文句を続ける。
「あ、じゃあボクのサンドイッチから好きなのとってくださいよ」
「あたしの卵焼きも食べ――…あ」
パク
「ん、美味し」
好意でサンドイッチを差し出した春に続いて、卵焼きを掴み要へあげようとした名無しさんだったが、要の元へ行く前に卵焼きは消えた。
「名無しさん、あーんするなら俺にやってよ」
「あ、悠太ズルい。名無しさん俺にも卵焼きちょーだい」
「はい、ゆーき」
犯人は春の隣に座る浅羽悠太だった。双子の兄だ。悠太を羨ましがる双子の弟――浅羽祐希にも卵焼きをあげれば、彼は満足そうに食べる。
「春も、要なんかに必要ないよ。ちゃんと自分で食べなさい」
「要ボンボンでしょ。おかずの一つ二つで何さわいでんの」
「いちいちつっかかってくんな双子。オレはお前らの巻き添えくらうっつーのが腹立つんだよ」
((((だったら誘った時断ればいいのに…))))
悪態をつきながらも弁当を食べ進める要の隣で、4人の心が一致した。