夫婦
□城下街の噂
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「噂?」
その日、政宗は名無しさんと共に城下街へと来ていた。
勿論、護衛はいるが、彼らは彼らで城下街を満喫している。
久しぶりの城下街で少しはしゃぎすぎたせいか、名無しさんが疲れた様子だったので甘味処で休憩していた2人。
すると団子と茶を持ってきた店主が、最近城下街に流れている噂について話を持ち出してきたのだ。
「えぇ。これが物騒な噂でしてね。
最近、夜半の子の刻になると、この城下を般若が徘徊しているらしいんでさぁ」
「Ah?夜中に般若だと…?」
「……な、なんか気味悪いね…」
話を聞いた政宗が眉をしかめていると、怖い話や幽霊がダメといった名無しさんが、彼の着物の袖をキュッと掴んだ。
それに気付いた政宗は、フッと笑い彼女の頭を撫でる。
「Don't worry…。俺がついてる。
――その般若によって被害は出てんのか?」
出ているなら、領主である政宗の元にも報告が入るはずだが、そんなものは聞いていない。
やはりまだ出ていないらしく、店主は首を横に振った。
「今の所は。…しかし、刀を持っていたという話も聞きます故、いつ出ることやら…」
「確かにな。被害が出た後じゃ遅ぇ。
…Thanks、じーさん」
ちょうど、名無しさんが最後の茶を飲み終えたので、店主に代金を渡した。
名無しさんの手を握り、店を去った。