夫婦
□七夜の願い星
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―夏の月の1日から7日の間、毎晩決まった場所でお願い事をすると叶うんだって―
いつの日かそんな事を聞いた。
この島でだったか、修業中の島でだったかなんて覚えてないけど、馬鹿馬鹿しいって思ったのは覚えてる。
願い事なんて自らの手で叶えるものと思ってたからね。
「…けど、なんだかんだで7日めなんだよね」
自嘲的にクスリ、と笑い7日めのお願いを始める。
1日から仕事が終わった帰りに、告白をした場所まで行って毎晩願った。
―ナナシさんとずっと一緒に居られますように―
(僕らしくないな)
神頼みをしてしまう程、ナナシさんと離れたくないんだ。
まさか、あの子と出会って僕がこんな風になるなんてね。
お願いを終えて、帰ろうと振り返った時、何故か僕が愛してやまない、ナナシさんの姿。
「………え?」
「来ちゃった!」
思わずマヌケな声を出した僕に向けられた笑顔が、何だか眩しい。
てゆーかバレてたのか。
「何でここに?」
「最近チハヤ、帰り遅かったから…何かあるのかなって。
そしたら、すごい一生懸命にお願い事してるチハヤ見つけたの」
そう言ってナナシさんは、空に両手を伸ばした。
「――チハヤとずうーっと一緒に居られますよーにっ!!」
真夜中なので抑えめに叫んだ後、恥ずかしそうに僕に笑いかけてくるナナシさんがどうしようもなく愛おしくて。
腕を引っ張り強く抱きしめた。
「ははっ…」
「チハヤ?」
「僕と同じ願い言うなんてね。
――愛してるよ、ナナシさん」
夏の月7日。
君に想いを伝えた場所で
君と叶える願い事を。
七夜の願い星
(ずっと一緒に居ようナナシさん)
((50年後の君も変わらず好きだって言えるから))