夫婦
□お手製朝食
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パンの香りが、鼻孔をくすぐった。
辺りに漂い始めた良い香りに、ナナシさんは目を覚まし起き上がろうとする。
「…っ!ぁー…」
「――ナナシさん、起きたのか?」
しかし予想外の腰の痛みに、再びベッドへ寝転んでしまう。
横になって腰をさすっていると、パンの香りを纏わせたセネルがこちらへやってきた。
「んーセネルおはよ」
「おはよう。…悪い、無理させすぎた…」
セネルは申し訳なさそうに表情を歪めながら、ナナシさんの額の髪をよけてそこへキスを落とす。
「ん、いいよ…。久しぶりだったから覚悟してたし」
実はセネル、5日程マリントルーパーの仕事で家を空けており、昨夜帰ってきたばかりだった。
「ナナシさん…ありがとな」
「…ん」
翌日に辛くなると分かっていても、自分を受け入れてくれるナナシさんが愛しくて愛しくて。
優しいキスを何度か送った。
「…――朝食持ってくるよ」
名残惜しそうに離れたセネルは、ナナシさんにしか見せないような笑みを浮かべ、キッチンへ向かった。
――先程焼けたばかりのパンが入ったバスケットやサラダ、スープなどがベッド脇のテーブルに置かれ、食欲を誘った。
「わ、美味しそう!」
ナナシさんの素直な感想に、照れたセネルはキスでごまかした。
お手製朝食
(ほら、あーん)
(じ、自分で食べれます///)
(駄目だ)
(何で!?)
(俺が食べさせたいから)