夫婦
□夕方のハーシェル家
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「よっ…と。ただいまー」
森へ食料調達に出ていたリッドは抱えきれなくなる程の荷物を持ち、家路に着いた。
手探りでドアノブを探し、やっとの思いで扉を開けると、テーブルの上に荷物を置く。
ナナシさんにこれやるよ!
ナナシさんちゃんに持って行ってあげな!
帰り道に次々渡されたタマゴやら野菜やらは、全て奥さん宛てだったりする。
まぁ、最終的には俺の腹の中だろうけどな。
料理上手な奥さんをもって本当によかった。と、ニヤつく顔を必死に抑えながら、リッドは辺りを見渡す。
………?
ふと、違和感を覚えた。
そういえば、ナナシさんからのお帰りなさいという声が聞こえなかった。
いつもなら、すぐに出迎えてくれんのにな…。
「出かけたのか?」
…いないとなると、妙に会いたくなるのはそれだけ愛してるって事か。
柄にもなくそんなことを考えていたリッドは、目の端に何かを捕らえた。
よく見てみると、ソファで丸まってすやすやと眠るナナシさんの姿。
………。
…やべぇ、可愛過ぎじゃね?
無防備に眠るナナシさんに近付き、寝顔を眺めながらさも当たり前かのように覆いかぶさる。
「………ナナシさん」
髪を優しく梳きながら、彼女の首筋に顔を埋めた。
まだ、昨夜の跡が残っているのが服の隙間から見えた。
そことはまた別の場所に吸い付き、新たな跡を付けると、ナナシさんが微かに身じろぐ。
「んぅ……」
………。
…やべ。止まんなくなってきた。
自分の中で理性と本能を闘わせてみるが、手が服へ伸びている限り、今のところ本能が勝っているのは確実だろう。
「ん、ぁ…リッド…?」
「お。起きたのか」
ナナシさんがうっすら目を開けたところで、リッドは一度手を止め、いつも通りの笑顔を見せた。
「で、起きたとこ悪ぃけど、ベッド行こうぜ♪」
「は…?――え、ちょ、待っ…」
まだ完全に目を覚ましていないナナシさんを抱き抱え、器用に梯子を昇っていく。
ナナシさんをベッドへ降ろして、覆いかぶさったリッドがいつもより、悪魔に見えた瞬間だった。
夕方のハーシェル家
(ぁんっ…も、絶対ソファで寝ないもん…)
(えー。別にいーじゃねぇか)
(また襲う気?)
(お前の寝顔が可愛いんだって)