brothers conflict

□ゆーくんとやぶれたズボン
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――マンションの前でなつ兄が名無しさんの頬にキ、キスをしているところを見ちまった後、俺は機嫌があまり良くなかった。
普段から兄貴たちは名無しさんへのスキンシップか多い。や、別に悪いことじゃねーんだけど……だーー!もう!

俺には恥ずかしくて出来ねーんだよ!

俺だって名無しさんが可愛い。そりゃ唯一の妹だし…。くっそー、居残りなんてさせられなきゃ、名無しさんと仲良く帰ってこられたのに。


「そういえば名無しさん。お前、このズボンの膝はどうしたんだ?」

「ぁ……あ、あのね」


未だに名無しさんを抱き上げたままのなつ兄とエレベーターで5階に向かう途中、なつ兄が切り出した。
よく見ると、名無しさんがはいている長ズボンの右膝の辺りが少し破れていた。


「あそんでるときにね、ころんじゃって…」

「ケガはしなかったか?」

「うん…ななしさんはケガしてないよ」


まこくんがケガしちゃったの。と小さな声で呟いた。まこくんて…確か今朝つば兄やかな兄が話題にしてた…。
ま、まさか、彼氏じゃねーよな!?


「…ななしさん、おこられちゃうかなあ」

「その、まこくんがケガしたのは名無しさんのせいじゃない。大丈夫だ」


なつ兄が落ち込む名無しさんの頭を撫でるけど、その表情は晴れない。


「…オメー、もしかしてズボン破れちまった事を怒られると心配してんのか?」

「!!」


俺の予想は当たったらしく、名無しさんの肩がピクッと動いた。「あぁ、そういう事か」隣でなつ兄が納得した表情をみせた。

俺は鞄を持ってない方の手を伸ばし、さっきなつ兄がやってたように、名無しさんの頭を撫でた。


「んなの心配すんなって!怒られねーよ!」


根拠はないが、自信はある!顔をあげた名無しさんの目は少し潤んでいて、なつ兄が抱き上げているため同じ高さになった目線では、結構、その、すっげえ可愛くみえた。や、実際可愛いんだけどよ。


「…ほんと?ゆーくん」

「おう。マジだ」

「…名無しさん、安心しろ。お前より、多分侑介が怒られるから」

「え!?何でだよ!?」


居残りの事か?でもいつものことだし…。


「俺がこっちに居たら誰かは聞いてくるだろ。“居残りになった侑介の代わりに名無しさんを迎えに行った”と言えば、京兄たちが黙ってないと思うぞ」


やっべえええ!!
「棗が午後休みではなかったらどうするつもりだったんですか?」とか「夕方まで誰も迎えに来てくれなかったら名無しさん泣いちゃうよ、ゆーくん。分かってる?」とかぜってーー怒られる!!

それで名無しさんの迎え禁止させられたら最悪だ…!!


「な、なつ兄!もう帰った方がいいんじゃねーの?」

「悪いな、生憎…」

「なっくん、かえっちゃうの?やー…!」


なつ兄が帰ればバレねーと思ったら、名無しさんがそれを嫌がった。多分、帰り道で何か約束したんだろーな…。

「帰らないよ」なつ兄が笑いかけると名無しさんはなつ兄の首に手をまわし抱きついた。
くそ、うらやま……な、何でもねえ!


「侑介、諦めろ」


そのなつ兄のどや顔が少し……いやかなりウザかった。


◇ゆーくんとやぶれたズボン◇

(きょうつっくんに、えほんよんでもらうやくそくしてるんだー)
(椿に?そっか、よかったな)

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