brothers conflict

□はるくんとおえかき
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「はるくん、おはよー」

「…おはよ、ななしさん」


いわとび保育園イルカ組。ここが名無しさんのクラスだ。教室にたどり着いた名無しさんは鞄を指定の位置へかけると、最近仲良くなり遊んでいる友人の元へ向かう。
机に向かい絵を描いている黒髪の友人――遥は名無しさんに挨拶を返し、再び机と向き合った。


「はるくん、ななしさんもいっしょにおえかきしていい?」

「うん。きのう、やくそくしただろ」

「えへへ、ありがとー」


画用紙とクレヨンを用意して。遥の隣に座った名無しさんは、鼻歌を歌いながら紙の上にクレヨンを滑らせた。


「……」


遥はちらり、と名無しさんを見た。年少から年中へとあがり同じイルカ組になった少女。
笑顔が可愛い女の子。


「う?どーしたの?はるくん」

「っ、……なんでもない」


遥の視線に気づいた名無しさんが問いかけるが、彼は頬を赤くしてそっぽを向いた。
名無しさんは首を傾げながらも、遥の手元を覗きこむ。


「はるくん、なにかいてるの?」

「いわとびぺんぎん…」

「わぁぁ…!はるくん、じょうずだねー!」


いわとびペンギンはこの保育園のマスコットキャラクターだ。可愛いとは形容し難い何とも微妙な顔をしているのだが、何故か園児には人気だった。
イベント毎に園長先生扮するいわとびペンギンはいつも囲まれている。


「ななしさんは?なにかいてるんだ?」

「ななしさんはねーおにーちゃんたち!」

「へぇ…。ななしさんはおにいさんがいっぱいいるんだな」

「うん!ななしさん、おにーちゃんだいすき!」


画用紙に何人も描かれた人の形をしたもの。髪色が赤だったりオレンジだったり、眼鏡をかけていたりバスケットボールをもっていたり、意外に特徴をつかんでいた。


「そういえば、りんくんとまこくんまだかなあー?」

「…たぶん、もうすぐ、くる」

「そっかあ」


自分より遅くにやってくる友人は恐らくもうすぐ来るだろう。
でも、それまでは


(もうすこし、ななしさんと2りがいいな…)


それは、まだ気づかない。

ほんの少しの独占的と恋心、


◇はるくんとおえかき◇

(ななしさんー!はるー!おっはよ!)
(ななしさんちゃん、はる、おはよう)
(りんくん!まこくん!おはよー)
(…おはよ、りん、まこと)

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