brothers conflict

□まーくんといってきます
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「いってきまーす!!」

「名無しさん、ちょっと待って」

「まーくんはーやーくー!」


バタバタと玄関へ続く階段をかけ上がっていった名無しさんを追う。
琉生と一緒に準備を済ませた名無しさんに忘れ物なんてないだろう。…僕の方が何か忘れてそうだなあ。鞄の中を一通りチェックしていれば、名無しさんが僕を再び呼んだ。


名無しさんが家を出るときはたいてい、他の兄弟たちも見送りにくる。
もう既に出掛けた学生たちや仕事で早く出なければいけない時以外は。


「じゃあ、戸締まりはよろしくね」

「りょーかい。行ってらっさい雅兄」

「名無しさん、今日もたくさん遊んでおいで」


今日は最後まで残っていた椿と梓に見送られて、家を出た。


別に毎日僕が送っているわけじゃない。僕も仕事が早い時もあるからね。
けど、名無しさんと2人で居られるこの時間は大切で。保育園までの道のりを手を繋いで歩いていた。


「今日は、何するの?」

「きょうはねー、はるくんとおえかきするやくそくしてるんだー」


はるくん。男の子だよなあ…。
…まさか、彼氏?いやいやいや早いよ!


「まーくん!」

「え?あ、何?」

「きょうのおむかえはだーれ?」

「今日は侑介が迎えに行くよ」


保育園に送っていくのが決まってないように、迎えに行くのも決まってない。
朝、皆の予定を確認してその場で決める。
いつの間にか出来上がったルールだけど、名無しさんは楽しそうだ。


たわいもない話をしていると保育園に着いた。
僕らの他にもたくさんの園児とその保護者が送りにきていて、その中に混じる。


「せんせー!おはよーございます!」


元気いっぱいに挨拶をする名無しさんに微笑んで、先生に「よろしくお願いします」と名無しさんの手を離した。少し寂しい瞬間。


「まーくん、またおうちでね!おしごとがんばってねー!」


身体全体を使って手を振ってきた名無しさんは後ろを振り返り、建物の中へと入っていった。姿が見えなくなるまで見送って。僕も保育園に背中を向ける。

“おしごとがんばってねー!”

今日はいつもより仕事に集中出来そうだ。


…はるくんは少し気になるけどね。


◇まーくんといってきます◇

(朝日奈ー。お前この間の小テスト点数悪かったから今日居残りなー)
(え゙………それは、やべえ)

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