brothers conflict

□あっくんとあさごはん
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「おはよー……」


とてとて…そんな効果音がつきそうな足音に僕だけじゃない、その場に居た全員が頬を緩めただろう。
琉生に手を引かれ、お気に入りのぬいぐるみを引きずりながら階段を降りてきた妹、名無しさんはまだ半分夢の中だった。


「おはよう、名無しさん」


口々に兄弟たちが挨拶を交わした後、僕も名無しさんを抱き上げた。手触りのいいネコの着ぐるみパジャマは、椿と僕が3ヶ月前の誕生日にプレゼントしたものの1つだ。

抱き上げた名無しさんを、指定席――僕と椿の間――へと降ろすと、右京兄さんが名無しさんの朝食を運んできてくれた。


「ふわぁーおいしそう!!」

「名無しさん、いただきますは?」

「いたらきます!!」


僕ら兄弟の中でも末っ子の藍はまだ4歳だ。まだ、箸やフォークの扱いがたどたどしい名無しさんの手伝いをするのは僕の役目だった。

今日は洋食らしい。甘いのが大好きな名無しさんの為にトーストは砂糖がかけられ、デザートのヨーグルトにはブルーベリージャムが入っている。僕ら兄弟の物より一層手がこんでいそうな朝食に右京兄さんから名無しさんへの愛情を感じた。


「名無しさん、砂糖ついてる。こっち向いて」

「う?」


良い音を響かせながらシュガートーストを頬張った名無しさんの口の回りには砂糖がついてしまっていて。傍らのナフキンで拭ってやれば、「あっくんありがとー」と満面の笑顔。可愛い。
まぁ、恐らくまた砂糖は付くのだけれど。

小さめに作られたオムレツも、控えめに盛られたサラダも順調に食べ終えた名無しさんの前に残ったのは、ブルーベリーヨーグルトだけだった。
名無しさんはしっかり混ぜてから食べる派らしく、白に紫が乗っていたヨーグルトも名無しさんの手により紫一色になっている。
小さなスプーンで少しずつ食べていた名無しさんだったが、ふと、その動きが止まった。


「名無しさん?もうお腹いっぱいになった?」

「んーん!」


そういう訳ではないらしい。
変わらない笑顔に具合が悪くなった訳でもなさそうだ。
よくわからなかったので様子を見ていると、名無しさんはスプーンにすくったヨーグルトを僕の方へ差し出した。


「あっくん、あーんして!」

「え?くれるの?…あー、ん」


名無しさんの更に向こうに固まった椿が見えた。それから、やたら感じる視線と妙なオーラが痛い。

名無しさんの可愛い行動は更に続き、首を傾げながら満面の笑顔で「おいしい?」と問われた時はやばかった。
椿、要兄、顔怖いから。侑介、昴、手止まってる。


「けど、どうしたの?急に」

「あっくんはいつも、ななしさんのおせわしてくれるから!おれいだよ!」


良い子に育ってるなあ、と頭を撫でてやれば、満足そうに名無しさんは残りのヨーグルトを食べ始めた。

君が1人でご飯を食べられるようになるまで、これは僕にしかしないでほしいな。周りから刺さる羨望の眼差しに少しだけ優越感に浸った。


「ごちそうさまでした!」


◇あっくんとあさごはん◇

(梓ずっりぃー!!名無しさんマジ天使!)
(あーちゃんたまには俺が代わるよ?)
(要と椿は起床時間がまちまちなので駄目です)

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