WORKING!!
□6品め!
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「八千代」
「はい杏子さん」
「私、何かやることあったっけ」
いつものように八千代が作ったパフェを食べる杏子。
店長職ともなれば、仕事はそれなりにあるはずだが、八千代に聞いている辺りもはややる気が感じられない。
「えぇと…そろそろ月間目標変えないと…」
「目標…」
「…めんどくさい。八千代頼むわ」
うげ、と怠惰な表情を見せた杏子は、自分から聞いておきながら八千代に押し付け去っていった。
「…かっこいい…」
(どこが!)
――学校を出た名無しさんは早足で門までの道を駆け抜ける。時折、一部の生徒が彼女の方を見るが、さして気にする事もなく元の雑談に戻っていった。
名無しさんの方もそんな事を気にせず、ただひたすらに走るのみだ。
(潤さんもう着いてるだろうなー)
HRが始まった直後佐藤にメールをしてみると、既に学校に向かっているとの返事。しかも運が悪い事に教師の話が地味に長く、HRが終わったのが普段より5分遅かった。
門を出て、辺りを見回すと見慣れた金髪が車に寄り掛かって煙草を吸っている。
その姿がかなりさまになっていて、女子生徒たちが頬を染めては友達同士で囁き合っていた。
「……」
もちろん、そんな様子がおもしろい訳もなく名無しさんは再び駆け出すと佐藤の元へ一目散に走る。
佐藤も名無しさんに気付き、煙草を携帯灰皿へ押し込んだ。
「潤さんお待たせー」
「ん。学校お疲れ」
思い切り抱き着きたいのが本音だったが、さすがに人が多い。
グッと堪えて助手席に乗り込んだ。
「ねー潤さん。
待ってる時、車の中で待っててくれればいーよ?」
「?分かった…けど、どうかしたか?」
「…女の子達が頬赤くして潤さんの事見てるのやぁ…」
珍しい名無しさんの嫉妬に気を良くした佐藤。
「…俺はお前しか見てないけどな」
少し気障な言葉で宥めながら名無しさんの頭を撫でた。