WORKING!!

□2品め!
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「おはよーございまーす。
――って、あれ?いつ来ても小鳥遊君がいる(笑)」



事情を知っていながら、所詮他人事なので笑う名無しさんに、小鳥遊は疲れた表情でため息をついた。



「おはようございます。
ここ数週間毎日ですからね…。
さすがにしんどい…」



そりゃそーだ、と思いながら掃除を始めた名無しさんは、杏子の元へシフトの相談へ行った小鳥遊の背中を見送った。



「店長…あの、シフトなんですけど…俺…」

「何?もっと働きたい?

――フロアチーフでもやるかタカナシ」



更に苛酷になりそうな小鳥遊のシフトを思い浮かべ、名無しさんは1人、静かに同情の眼差しを送った。



「名無しさん、おはよ」

「あ、潤さんおはよー」



佐藤が現れれば、ものの数秒でそれすらもやめるのだが。









「店長、何怒ってるんだろう…」

「もしかしてかたなし君何か…」



原因に気づかない小鳥遊はあれこれと考えてみるが、どれもこれも杏子が更に怒る事になりそうな考えばかりだった。



「何か…何か言ったかなぁ」

「あたし知ってるよー」

「あ、名無しさんちゃん!」



ぽぷらの頭を一撫でした名無しさんは、この間の小鳥遊と杏子のやり取りを話した。










「かたなし君ダメだよーそんな事言ったらー」

「ええっ!?
だってもう年増じゃないですか!

――12歳過ぎたら!」

「早っ!早いよ!」



小鳥遊的ルールの基準が小さいものである事は当たり前なのだが、名無しさんは少なからずショックを受けた。



「ちっさいぽぷらはともかく…あたしも年増になるのか…」

「名無しさんちゃん!私ちっさくないよ!!」

「ふぇぇー潤さーん!」



少し、というよりは結構ショックを受けたらしい名無しさんはぽぷらの反論も聞かず、キッチンへ去っていく。

直感的に小鳥遊はヤバいと思うが、既に遅かった。



「名無しさん?」

「潤さーんっ、小鳥遊君的ルールじゃ、あたし、年増なんだってーっ」

「…小鳥遊」



ゴゴゴゴ…と効果音が付くような恐ろしい雰囲気で歩いてくる佐藤に、小鳥遊は本気で恐怖を覚えた。



「ふぇぇー」

「名無しさんちゃん、小鳥遊君のルールなんて気にしなくていいんだよ?」

「相馬さん…」



佐藤が名無しさんから離れた直後、チャンスとばかりにやってきた相馬は笑顔で名無しさんの頭を撫でる。



「小鳥遊君のあの考えにもいろいろ彼の過去が絡んでるみたいだし…」

「…そーなの?
じゃーいいや」



何で相馬が小鳥遊の過去を知っているのかという疑問はもはや愚問である。



「うん、落ち着いた?――じゃあ遠慮なく俺に抱き着いていいんだy…」



パコーン!



「いった!?」

「相馬、いい度胸してんなお前」

「さ、佐藤君いつの間に…」



フロアから戻ってきた佐藤は、名無しさんに両手を広げている相馬の後頭部を思い切り殴った。

痛がっている相馬を追いやり、名無しさんに向かって手を広げる。



「名無しさん」



素直に飛び込んできた名無しさんを抱きしめて、しばし甘やかした。








(…絶対年増の中に名字無しさんさんを入れるのは止めよう)



佐藤の恐さを知った小鳥遊だった。



  
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