夫婦
□城下街の噂
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「――ふむ。話は分かりましたが、どうなさるおつもりですか?政宗様」
城に戻り、竜の右目である小十郎に噂について話した。
「今夜行って調べる。噂の真実は、自分で確かめるのが一番だしな」
「ならば、この小十郎もお供いたします」
あぁ、と承諾の意を示した政宗は、隣にいる名無しさんを見た。
「名無しさんはどうする?怖いなら城にいてもいいんだぜ」
なるべくなら彼女に怖い思いはさせたくない。
名無しさんは少し考えると、意を決したように顔をあげた。
「ううん、行く。城下の人達の方がもっと怖い思いしてるもん」
民を思う気持ちが瞳によく現れている。
それだけ、名無しさんの瞳には決意の色が見えた。
「Ok、さすが俺の妻だ。――けど、無理はすんなよ?」
「うんっ!」
優しい笑みを浮かべ、政宗が名無しさんの頬に手を当てれば、彼女も嬉しそうに笑い政宗の手に自分の手を重ねた。