ギフト

□サヨナラ。
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こんこん。
唐突に、音がした。

「コンラッド……、入っても良い?」

ノックの音と共にかけられたのは、ユーリの困惑した声。
何が、あったんだ?
ユーリ。

「えぇ、良いですよ。」

あくまで、平静な振りを装って、扉を開く。
キィ……。
扉の前には、涙目になったユーリがいた。

「中に、入れて、貰っても…良い?」

ユーリがためらっている理由は全く分からなかったけれど、
俺はためらわず、
ユーリを部屋の中に招き入れた。

「はい。」

ユーリは、部屋に入った途端に、堰を切ったように、泣き出した。
……声を、殺して。
そっと、俺がユーリを抱きしめると、
ユーリは、素直に俺に体重を預けてきた。

つまり、こういうことらしい。

俺は、ユーリを裏切ったから。
しばらくの間、ユーリと距離を置かなければならない。
そして、ユーリは俺の部屋に入ることを禁じられたのだ。
1ヶ月間。
ユーリには、分からなかったのだ。

「どうしてなんだよっ!コンラッドがあっち側に行ってた理由、分かってるくせに…。…なんで…。なんで……。」

ユーリ……。
俺は、どれだけ、
ユーリを傷つけてしまったのだろう。

「…今日、だけでも、一緒に、いたくて。」

1ヶ月のサヨナラの前の、1日。
それが、今日なのだ。
……俺にも、知らされていないのに。

言葉が、こぼれる。

「……離れたくないなら、行かなければいいんです。」
「えっ……?」

魔法のようだ。
ユーリの涙が、止まった。

「もう、この部屋を出なければいい。」

ユーリの顔が、くしゃくしゃに歪んでいく。

「それとも、ユーリを連れ去ってしまおうか?」
「…駄目…駄目だよ……コンラッド……。」

分かっている。
分かっているけれど、 俺はユーリと離れたくないんです。
こんなに、
こんなに、胸が苦しくなるなら。
それなら、一時も、ユーリのそばを離れなければ良かった――。
今更、後悔しても遅いのに、
俺の思いは、どんどん膨れ上がっていく。

「ごめん…。おれ、やっぱり、王様、だから…。離れなきゃ、いけない時も、ある、んだよ…。」
「……分かって、ます。」
「ごめん……。コンラッドを…傷つけて……。」
「違う!!」

ユーリが、びくん!と肩を震わせて、
そっと、俺を見上げる。
見上げた瞳からは、
抑えきれなかった涙が溢れていく――。

「コンラッド……?」
「ユーリのせいじゃない。俺のせいなんです。だから、だから……、泣かないで下さい!!」
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