ゴーストハント


□彼らの憂鬱【2】
1ページ/1ページ

麻衣に彼氏が出来そうだ、というのは誰の情報だったか。
年の割には浮いた話が全くなかった彼女に浮上した話題に、保育園の教師陣はさまざまな反応を見せていた。心配するもの喜ぶもの、若干一名、父親を名乗る男だけはカリカリしていたが、おおむね「これからを見守っていこうよ」という空気ができつつあった。それは早熟な女の子にも飛び火して、おませな年長クラスの女子はその話題を大いに楽しんでいた。
そのような状況では、嫌がおうにもジーンとナルの耳に入るというもの。二人は表にこそあらわさなかったものの、大いに心を乱した。

相手はどのような男なのか。
本当に麻衣はその男に恋をしているのか。

即刻それを調べねばなるまい。双子は結託して麻衣の身辺調査に乗り出すことにした。


+++++
「まいちゃん、カレシできたって本当?」
麻衣は困り果てた。お遊戯の時間にする話ではない。しかし女の子が見る見る間にたくさん集まってきて、麻衣にキラキラとした瞳を向ける。みんな好奇心のかたまりみたいだ、と麻衣は困惑の中で思った。
「だ、だれに聞いたのカナ〜?」
ひとまず疑問を口にすると、女の子たちは当然とばかりに言葉を返す。
「みんなゆってるよ。先生たちがお話してるのきいたことある」
「たっくんのママやももちゃんのママもお話ししてたー」
「あたしのパパは残念がってたよ」

眩暈がする。
こんなに話が広がっているなんて・・・。しかもたくさん尾ひれがついていそうな気配が濃厚だ。
あのね、と切り出そうとして麻衣はハッと我に返る。ここで本当のことを子供たちに言っても、話がさらに捻じ曲がって広がっていくだけだ。それならあとで滝川先生あたりにでもきちんと説明すれば、わかってくれるだろう。そこから事態の沈静化を図ろう。
そう考えて麻衣はごまかすことにした。
「仲良しのお友達がひとり増えただけだよ」



お遊戯後。ジーンは女の子たちに囲まれていた。少しはなれたところで、ナルは一人座って話を聞いている。
「まいちゃんにきいたよ。やっぱりカレシできたみたい。がっこうで同じクラスなんだって」
「なんて名前なの?」
「なんだったかなー」
「ひかみくんだよ。『シュート』のメンバーとおんなじ名前だったから覚えちゃった」
アイドル好きの少女がわくわくして言う。
「ひかみくんかぁ・・・まい、話してるとき楽しそうだった?」
「そうだね!かんぜんに『こいするおとめ』だったよ!」
あくまでも世間話という態で聞いているジーン。だが内心はブリザードである。
自分たちの大事な麻衣に、害虫がくっついた。いつかはこんなことがあるかも知れないと懸念していたものの、由々しき問題だ。そう考えてジーンとナルは独特のラインで会話しあう。
『相手を完全に突き止めたら、まいから引き離さなきゃね』
『手段は?』
『これから考えるよ』

不穏な空気が二人を包んだ。
しかし、彼らは大事なことを見落としていた。

情報提供者が、必ずしも正確に物事を伝えていないかもしれない、という可能性を。




続いてしまう。
話が進まない・・・。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ