crazy for YOU

□そんな設定、忘れてました。
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はるひ「祐くん……祐く……っきゃ!?」


祐輔を追い掛けて廊下を走っていたはるひも、体力が無い割には頑張ってついて行っていたが、五分も経てば足をもつらせて転んでしまった。


はるひ「……う」


いつもなら後ろで転ければ駆け寄ってくるかは別として、何か声を掛けてくれる筈の祐輔も今はただスタスタ歩いていくだけだ。


はるひ「……はるひ何かしちゃったかなぁ……」


祐輔が怒っている理由に見当もつかないはるひは、ただうつむくしか出来ない。


また瞳に収まり切らなくなった涙が零れそうになったその時、


──♪〜♪♪〜♪


今のはるひの心境には到底不釣り合いな、底抜けに明るいメロディーが鳴り響いた。


はるひ「……っ」


ブルブルと震えるバイブを胸ポケットに感じてゆっくりと携帯を取り出すと、そこには『祐くん』の三文字が浮かんでいた。


はるひ「ゆ、祐くん……っ!!!!」


コールが鳴り止まない内に、慌てて通話ボタンを押すと、耳に当てる前に声を発した。


そしてその後素早く携帯を耳に当てれば聞こえてきたのは、


『……ごめんね』


幾分か落ち着いている祐輔の声だった。


はるひ「祐くん……ごめんなさ……っ……はるひ、何か怒ることしちゃったかな……?」


祐輔『大丈夫だよ。 ちょっとお腹痛かっただけ……戻って、皆にそう伝えて?』


はるひ「……お腹?」


祐輔『そう、お腹』


はるひは一瞬ポケッと祐輔と繋がっている携帯を眺めると、目に笑みを浮かべて安心したように残った涙を頬に流した。


はるひ「良かったぁ〜……はるひ、祐くんが怒ったの見たこと無かったから怖くなっちゃったよ……」


祐輔『うん、ごめんね。 ……じゃあ』


それだけを短く言うと、祐輔は素早く終話ボタンを押したようで、はるひの携帯からは無機質な『ツーツー』という音が小さく響いていた。
















一方、生徒会室に残された面々はというと──


和希「ぅおおい!? 祐輔の奴一体どうしたんだよ!?」


椅子が直撃したダメージもなんのそので、和希がただ一人慌てていた。


他の面子はただ唖然と祐輔が出て行った扉を眺めるしか出来ないでいる。


今まで中学校生活を共にしてきた千架だって祐輔だって、物を投げるなんてアグレッシブな祐輔は見たことが無かった。


そしてようやく、溜め息と共に唯が口を開いた。


唯「真琴、何があったのさ?」


祐輔が怒った理由が分かるのは、本人と近くに居たはるひが居ない今、共に言い争いをしていた真琴だけだ。


真琴「何って……別にいつも通りの調子で言い合ってただけだぞ?」


千架「……祐輔がキレる直前は? 何言った?」


真琴「は? 確か……『はwww坊ちゃまの柔肌と楽観的思考じゃはるひひとりも守れねーだろwww』……だっけか」


和希「ひ、ひでー!? なんだお前それでも女子かよ!?」


千架「何だいつも通りだな……」


真琴「だろ!? それをなんであんなキレたんだアイツ」


和希「……やべぇ俺がおかしいのか? 早坂の言葉ひでーと思った俺がおかしいのか!?」


唯「や、普通の感性は大切だよ。 ……この面子で通じるかは別として」


和希「……最初の設定では確か千架と早坂って大分常識人だった気がすんだけどな……逆に俺がぶっ飛んでてさぁ」


唯「……地味キャラ降格」


和希「地味にひでーな南野も!!!!」


唯「まぁここのいい加減な管理人が設定通りいけるわけ無いし」


そんなブラックワードが出っぱなしの唯と和希の会話を止めたのは、


はるひ「お腹痛いだけだって!!!!」


この物語一番のぶっ飛び娘、はるひの登場だった。





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