crazy for YOU
□ペナルティー
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千架「──とにかく」
はるひ「皆一緒うれしーねっ! だってはるひ、千架ちゃんと祐くんと和ちゃんも一緒だったら楽しいなってずっと思ってたもんっ! お願い叶っちゃった」
唯「本当脳天気……ま、いいけどさ」
千架「おい話しを──」
はるひ「真琴も和ちゃんもうれしーよねっ! ね?」
和希「お? おお──」
真琴「おいはるひ、ウチの言葉聞いてたかー? ウチが言ったのは、教師と一緒じゃないだけ マ シ だぞ? 誰も嬉しいだなんて──」
和希「早坂ァァア!? 何でいつもいつも俺の言葉遮んだよ!?」
真琴「あぁ?」
和希「俺達仲間だろ!? アンケートで投票数の少ない同志じゃグボフ!?」
それが……和希の最後の言葉になった……。
と、いうのは冗談で、和希は真琴に思い切り鳩尾を殴られてそのまま意識を手放したのだった。
はるひ「うわぁ……和ちゃんだいじょぶ?」
唯「死んだんじゃん?」
真琴「あんなチビほっとけ、あんなんで死ぬんじゃこの先生きてても意味ねーよ」
唯「何そのRPGのパーティーに一人はいる兄貴分的キャラの様なセリフ」
はるひ「ちがうよ! 真琴は女の子だか──」
千架「いい加減にしろ!」
一際大きな千架の声に、思わず意識を無くしていたはずの和希がピシッと立ち上がった。
よっぽどダメージは大きかったのだろう、顔面は蒼白である。
だがそんな怒った人間に対して相応の態度を見せたのは和希ただ一人で、
祐輔「……zzZ」
祐輔は相変わらず寝息を立てている。
はるひ「あっ! 千架ちゃんも一緒にお話しするっ?」
はるひは、まぁ脳天気である。 そしてその発言は第三話で見せたそれとほぼ変わりはなく、彼女はこれと言って成長をしていないのも伺えた。
まぁ、長いように感じても実質は一週間ほどしか経ってないのだから成長していたらしていたでおかしいのだが。
千架「雑談は別に構わないが……とりあえず決めることだけさっさと決めさせろ、いつまでたっても帰れないだろ」
真琴「んだよまだ何かあんのかよ」
千架「当然だ。 各班の班長、副班長、保健係、清掃係決め。 その後は自由行動の時に回る場所だ。 一日目は奈良で二日目は京都な」
唯「……そんなん適当でいいと思うけど」
真琴「あの馬鹿(はるひ)がいるかぎり絶対コース通りにはいかねーしな?」
千架「……元も子もないな。 とりあえず係りは後に回すか、祐輔も寝てるし」
真琴「んじゃとりあえずコース決めるか! あ、金閣寺は行くだろ!?」
なんとか話し合いの形に持って行き(参加しているのは千架と真琴だけだが)自由行動のコースも順調に決まっていくそんな中──
はるひ「……」
はるひが一人珍しく輪から外れて、少し遠くから地図とガイドブックを見ている千架を見ていた。
和希「どうしたんだはるひ?」
はるひ「……えっ!?」
和希「いや、なんかボーッとしてっからさ」
はるひ「あ、ううん! なんでもないよ! はるひたちも行くとこ決めに行こっ!」
和希「……?」
はるひは和希の問いに答えることはせず、にぱっと効果音が聞こえそうな笑みを見せて、素早く輪の中に入っていった。
そんな彼女はいつも通りの笑みで、和希は思わず首を傾げた。
和希「なんなんだよ」
最近、千架と祐輔の様子がどことなくおかしいのは感じていた。
そして今のはるひ。
兄弟が多いせいか、和希は人の心に敏感なのだ。
……その理由を考える頭も、解決出来る術も生憎彼は持ち合わせて居ないのだが。
きっとそれももどかしいのだろう、和希はクシャッと赤いツンツンとした髪をかくと、瞬間笑顔を作って一歩踏み出した。
和希「俺映画村に一票!!!!」
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