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□響也先生
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「響也先生!」
「ん、ああ、キミか」
今年の始めから僕の周りをちょこちょことうろつき始めた子猫ちゃんは、どうやら僕に恋心とやらを抱いているようだ。
参ったな、と苦笑いを浮かべ、彼女を見ると彼女は目のあった喜びにふにゃりと笑う。
可愛いんだけどね、女の子としては、充分。
「それ、プリントですか。手伝いましょうか」
「ありがとう、でもエンリョしとくよ」
「じゃあ付いていっても良いですか?」
中々、めげない。随分と積極的な子のようだ。
遠巻きにきゃあきゃあと騒がれることには慣れているが、こう、真っ直ぐに当たられるのは初めてで戸惑う。
勿論、生徒に、って限定した場合だ。
教育実習中に担当の女教師に言い寄られたときにはもうどうしたもんかと思ったね。
「なあ、梛ちゃん」
「あっ、はいなんですか?」
「君には好きな人はいないのかい?」
彼女が僕に寄せる思いには気づかないふり。
今時教師がこんな話題振ったって別に咎められたりはしない。
君の思いには応えないよ、すまないね。
そう、込めたつもりだった。
「居ますよ、響也先生です」
彼女は真っ直ぐに僕を見た。
きらりとした瞳に、挑発的な光が宿る。
参った、こいつは只のオンナノコじゃ無かったみたいだ。
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