目が覚めて、すべてを失っている。可愛がっていたコネコちゃんはみんな、何処か遠くへ消えている。一番大事にしていたオンナは、手のとどきようのない場所へ消えている。そんな気持ちが誰に理解できようか。守りたかったもののすべてが、俺が無様に眠りこけていた間に失われていた。 「荘龍さん」 せめて。 「絶対に、あなたには負けない」 せめて、お前だけでも。瞑ったまぶたの裏に映る、笑顔。その決意の裏に潜んだ涙。総て受け入れて送り出した。ここに来れば、最後に二人で訪れたここに来れば、お前に逢えるんじゃないかと思えた。俺を慕い、追いついて突き放され、それでも努力し血を流し、必死に俺のいる世界に食らいついてくる。それが、三浦梛だった。俺の知っている三浦梛。最後に会ったのは、丁度星影先輩の所へ千尋が来る少し前だ。必ず、俺を超えて戻ってくる。そう誓った梛の目に涙が浮かんでいたことは気づかないふりをした。 「アンタ……!」 俺と梛の行きつけだったバーに行くと、マスターが驚いてグラスを割った。 「死んだんじゃ、無かったのか?神乃木……!」 「梛は」 マスターが再び目を見開いて、視線を逸らす。頼む、早く答えてくれ。梛はいま、どこにいる。どこで何をしている。きちんと俺を超える弁護士になっているのか。 「死んだよ」 「は」 「アンタが、死んだって聞いた……1週間後にな。事故だったのか、自殺だったのかは、わからない。なあ、どうしてだ?どうしてアンタは今頃戻ってきちまったんだ。梛の死は、どうなるんだ」 「ん、な……こと」 知らねえよ。 まっさかさま 絶望から、絶望に |