くああ。間の抜けた音がした。私は振り向く。ソファに座ったまま、ゴドーさんが大きなあくびをしている。私が見ていることに気づいたゴドーさんはにやりと笑みを浮かべる。やな感じ。私がまたお笑い番組を放送しているテレビを見ようと身体を前に戻すと、ゴドーさんが急に話しかけてきた。おい。私は振り向く。今度は首だけで。するとゴドーさんは立ち上がって、こちらに歩いてきた。 「なにヘソ曲げてんだ」 「ヘソ曲げてないけど」 「嘘はよくないぜ、コネコちゃん」 夜になってもカーテンを開けっ放しの私の部屋。窓から星がたくさん見えた。私の視線を追って、ゴドーさんも星を見る。そしたら、もうこの話題は続かないんだろうな。私は知っていた。そしてやっぱりゴドーさんは話を変える。 「星でも見に行くか」 「こっからでも見えるけど」 「つれねえな」 クッ。ゴドーさんはよく分からない声を発し、また空を見る。ここからでも見える、と言ったはいいのだけれど、なんだか外に出たくなってきた。私はゴドーさんの背中を見ながらそう思う。どうせ見るなら外の空気を吸いたいなあ、なんて。 「出るかい?」 「出る」 「クッ……ったく、ワガママなもんだ」 ゴドーさんの車に乗って、マンションを出る。ジャズ調の曲が車内にかかっていた。私はそれを聴きながら目を瞑る。気がついたら、眠りについていた。 「おい、おやすみの所悪いが……着いたぜ」 「ああー……うん」 ゴドーさんが助手席のドアを開けてくれた。私は車からおりる。ふと目に入った信号は赤く光っていて、ゴドーさんにもあの赤は見えるのだろうか、と思った。私がそんなことを考えているなんてまったく知らないゴドーさんは、私の腕を掴んで歩き始める。手を握る、じゃないところがゴドーさんらしい。 「すごい」 「満天の星空、ってトコだな」 「きれいだねーゴドーさん」 「俺にとっちゃよっぽど梛のほうが綺麗だがなァ」 「くさい台詞ですね恥ずかしい」 「コネコちゃんがお望みなら、いくらでも」 「望んでません別に」 「ヘソ曲げんのもそろそろオシマイにするんだな」 「……うるさい」 輝くのは ゴドーさんひとり、ってね |