「もしも。もしも僕がね」 僕がそう言うと、梛ちゃんの飲んでいたクリームソーダの氷がカロンと音をたてた。梛ちゃんはくるんとした大きな目で僕を見つめる。もしも。この言葉を使い始めたのは梛ちゃんだ。もしもわたしが男だったら、成歩堂さんはわたしを好きにはならなかった?そう質問されたのだ。梛ちゃんが望む答えと、僕の答えは同じだった。きっと、好きになっていただろうね。もしもわたしが成歩堂さんより年上だったら、成歩堂さんは私を好きにはならなかったかな?好きになっていただろうね。僕が好きなのは年下の君じゃなくて、君自身だから。 「……もしも僕が、死にたいっていったら」 梛ちゃんは白と緑のストローをくるくると口でまわしながら、僕を見る。瞬きをすると彼女の長い睫毛がよく見えた。 「梛ちゃんはどうする」 僕の望む答えはね。梛ちゃんは瞬きをした。綺麗な紅色の梛ちゃんの唇が、弧を描く。彼女の喉の奥から、くすっと笑い声が漏れた。 「わたしも、死ぬ」 ああ、僕の望む答えと、君の答えは同じみたいだ。まあ、分かっていたことだけれどね。じゃあ、もしも僕が君の心臓を止めてしまいたいほど好きだって言ったら、君はどうするかな?……わかってるよ、答えは。大丈夫、もしもの話だ。 「もしもわたしが、成歩堂さんの心臓をとめてしまいたいほどすきって言ったら、どうする?」 「もちろん、」 もしも世界 きみのすきにしていいよ |