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□恋心
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あの日、満開の桜の木の下で仲間たちに次々と酌をされて空になることがなかったサクラの紙コップ。
中身を舐めるように味わい、公に許されたアルコールのため頬を染める様子に8年という月日の長さと短さを感じた。
ビニールシートに投げ出された足先までほんのり赤く、その姿を晒したくなくなって
「サクラ、ぱんつみえるよ?」
とセクハラじみた言葉で上着を膝にかけさせた。
この子がずっと俺の生徒であれば良いのにと思い、この女が俺のものだったらいいのにと思う。
師弟であった過去が、上司と部下である今が煩わしかったが、彼女を深く知らなければ惚れたりなどしなかっただろう。
そして例のサクラの癖だ。
ぼんやりと、何処に向けるでもない蕩けるような目、上気した頬を撫で、口元を掠めて白くなだらかな肩を這う指先。
その腕をとって抱きしめて気だるそうなため息を吐く唇を奪いたい。
そんな衝動に駆られるくらいサクラは大人になった。
彼女の成長と共に俺の気持ちも変化して好きで好きで可愛くて堪らないこの子の色っぽい仕草を沢山のひとの目に晒したくないのだ。
思えばこんな風に誰かを思うことなどなかった。だからこれは初恋なのかもしれない。
「サクラ、帰れそう?」
「はい」
「ん、じゃ、行こうか」
俺は幹事にサクラを送ることを告げて店を出た。