□おかえり
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 先輩に誘われた合コンで断りきれなかった。

でも先輩には彼氏がいるので結局のところ私と彼が引き合わされたみたいなものだ。

第一印象は悪くなかった。

本当にごく普通の良いひとなんだなあ、と思う。

私より背が高ければもっと良かったかな、なんて勝手な事を思いながら、送らせて欲しいと言うので家の側まで送ってもらった。

ついでに次に会う約束もして、私は彼が去る姿を見送ってから帰った。

 約束した休みの日、これはデートなんだろうな、と他人事のように思いながら彼を待つ。

ちょっと遅れてやって来た彼は暑いね、と言って笑う。

そうですね。と当たり障りのない天気の話しをしながら商店街を歩く。

休日なのでたくさんのカップルが手を繋いだり肩を寄せあって歩いていて、端から見れば私もそんなカップルの一組にみえるのだろう。

なんか嫌だなあ、と考えながら軒先の風鈴の澄んだ音に耳をすませていると、手を握られて、

「手、繋ごう」

耳元で声がして鳥肌が立つ。

繋ごうって何? 拒否権無し? 聞かれる前から繋がれたし?

正直好きでも何ともない男と手を繋いで人前なんか歩きたくない!

という私の心の叫びは何処にも届かず、繋がれた手を握り返さずに少し歩いた。

午前中だったけど日差しは強くて汗をかく。

彼はそれを理由に手を放してくれたけれど、私は汗くらいどうってことない。

血や泥なんかよりはずっと良いと思う。

痛くも怖くもないし、焦りも心配もないからだ。

そのあとも何度か手の甲が触れ合ったけれど私は手を繋がなかったし、繋ぐ隙も与えなかった。

映画を観て食事をしてウィンドウショッピング。

ほとんど1日拘束されてすっかり疲れて帰路に着く。

帰りたいと言い出せなかった私も悪いが言って良いものか分からなかった。

帰り道、里や里近辺の夏の祭りは終わってしまったと言う話しをしながら歩いていたら、「来年、来ればいい。花火をみよう。高台にある神社からの景色が良いのでみせてあげたい」なんて言われた。

来年、私は彼と居るのだろうか、想像することさえ想像出来ない。

大体花火には大して興味がないし私は忍だ。

見晴らしの良い場所ならいくらも知っている。

けれど面倒なので適当に相槌を打って笑っておく。

なるべく早く終わりにしなければと思いながら次の約束をした。

好きになんてなれそうにもないけど普通の良いひとだってことは間違いない。
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