□夜食色々
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 夜の静寂を破る軽快な足音は楽しげに響き、まるで踊るように一定ではなく弾むよう。

一体何がそんなに楽しくさせているのだろう。

是非問いたい足音の主は肩で扉を押し開けて両手の荷物を軽く掲げて挨拶をした。

「お疲れ〜、夜食買ってきたんだけど食べる?」

夜の気配を吹き飛ばす溌剌とした声に真秀が答えた。

「アンコ、お疲れ。食べる、食べる! もうお腹すいて倒れるかと思うくらい」

3人分のお茶を入れ直しに立ち上がった真秀の隣にアンコが腰掛け、袋の中身を机の上に並べ始める。

おはぎに大福、串に刺した団子が数種類ある。

「甘いのしかないの?」

思わずカカシが尋ねるとアンコが歯を見せてニヤリと笑う。

「見くびってもらっちゃ困るわ! 甘味の理解できない可哀想な奴のためにお握りもあるんだから!」

得意気にふんぞり返ったアンコはカカシの前にそれを置いた。

「ありがとう」

「どういたしまして。で、あの子どんなよ?」

「大丈夫でしょ。機会を逃して色々溜め込んでただけ」

そう、と神妙に相槌を打って泣いた後が頬に残る真秀をちらりと盗み見る。

「あんた、泣かしたんでしょ? 悪い男ねぇ」

今度は茶化して笑いアンコが真秀を手招いた。

「何?」

盆に急須と湯飲みを持って戻り、腰掛ける。

「どうしたのよ、その顔? 涙の後消えてないし、目は赤いしカカシになんかされた?」

「あー、されてない。私が勝手に泣いただけ」

まったく動じずに真秀が苦笑をみせた。

アンコとしては、からかい甲斐がなくて少々つまらない。

「ふーん。あんたたちって昔っから付き合ってるとか出来てるとか噂あるけど実際どうなわけ?」

と、ネタを振って様子をみる。

「「何もないけど?」」

真秀とカカシが見事に同時に答える。

「……仲良いわね。あんたたち」

「ま! 長い付き合いですから」

顔を見合わせて頷き合う二人に呆れてアンコがため息を吐き出した。

「私、カカシが恋愛って考えたことないんだよね。カカシって公私なく忍って感じがして」

「なんか失礼じゃないの? それは真秀も一緒でしょ。気付くと任務で長いこと里にいないよ?」

「前は同じ所属だったし任務で会ってたけど今はすれ違うくらいだものね。……そういえば任務とか飲み会以外で会うのって明日が初めてだね、カカシ」

「ついでに二人っきりていうのも初めてだからデートみたいだねぇ」

「墓参りがデートとかないから……」

軽く言い競ってじゃれるカップルみたいになって来たわね、とアンコは独り真秀が淹れようとしていた急須からお茶を注ぎ、持参した大福を頬張る。

明日には「やっぱり二人はそういう関係だったらしい」なんて噂が流れるんだろうな、と口元に付いた粉を拭いながら思った。



おしまい。

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