夢
□人生色々
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新月だった。
月明かりのあるなしで、任務に当たる忍たちの生死は揺らぐものではないし、良し悪しだ。
しかし待つものにとっては不安を煽る。
取り立ててすることのない夜勤の待機は真夜中の修羅場を駆け抜けるより長く、長く感じる。
同じく夜勤だった仲間は緊急の呼び出しで里を出てしまった。
帰りを待つことはいつも辛い。
待ち遠しかったのは小さな頃だけだ。
ある日待ち人は帰らず、やがて一人きりになると私は任務に没頭し、上忍になっていた。
こんな風に時間が空くと急ぎすぎただろうかなんて思う。
歳をとったような気がした。
「ねえ?」
「ん?」
呼びかけに応じ愛読書から顔を上げた向かい側に座っている眠たい目の男は私の手元をみて言った。
「火傷するよ」
「しないよ」
火をつけて指に挟んでいただけの今にも燃え尽きそうな煙草を握り締める。
じゅっと音をたてて消えた濡れた煙草を灰皿に戻すと、彼は「ああ。そうだった」と懐かしく噛み締めるように言って笑った。
「随分一緒にならないよね。カカシと」
「ん、そうだな。上忍師になってから組んでないか」
私の水遁とカカシの雷遁は相性が良い。
連携が上手くいったときの雷切はとくに美しかった。
真夜中、暗闇に踊る死を司る青い閃光。
そしてあの独特な千の鳥が鳴く音を私は殊更好きだった。