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□彼にしか出来ないこと
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疲れた。眠いとぐずる子供の手を引き、背を押してサクラは里への道を急いだ。
時間制限を設けたナイトハイクは下忍の訓練の一つで日没後元気に里を出た子供たちの口数は道が険しくなる度に減り今ではただのうわ言になった。
涼やかな風が通りすぎても、目を覚ました小鳥が囀ずっても疲弊した子供たちの感覚には響かない様子だ。
ふらりと、すぐ横で傾いだ弟子の腕を引き寄せ真っ直ぐ立たせ、その背を叩いて励ました。
「もう少しで里に着くわ。着いたらいくらでも眠って構わないから目を開けて前を見て」
言った側から反対側でカクンと首が下がるのでサクラは思わず声をあげて笑った。
(駄目だ。おもしろい……しかも可愛い)
幼く丸い頬を指で突いて起こし、だらり下がった手を取ると忘れていた思い出が掠めた。
『ほら、危ないっていうか器用だな。サクラ』
半分眠ったまま歩いていたサクラが躓いて転ばぬようにカカシが手を取ってくれた。
眠ってなんかいないわよ! と苦しく言い訳する自分と聞き流して苦く笑う細められた目が懐かしい。
上忍師になってから直接報告に行くような事柄が無くなったのであまり会っていないが風の噂ではいつも通り、カカシ先生らしく仕事をしているそうだ。
先生なんてしばらく呼んでないな、とサクラは何処か寂しく思う。
カカシ、と名を呼ぶ者も公の場になると殆んどいない。
何故なら彼は今、六代目火影の名を背負っているからだ。
距離が遠くなったなんてことはないけれど何かが変わったような気がした。
そう不安を溢せば否定してくれる仲間はいくらもいるし、二人の火影の直弟子であることは誇りだ。
考えが暗くなるのは疲れているせいかもしれないと思い直し、明日の休みはのんびり過ごそうとサクラは心に決めた。