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□日常
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「はい、脱いで。傷みせて? ここは診療所じゃないって何度言ったら分かってくれるの?」
「仕方ないだろ。おまえより腕の良い医忍を俺は知らない」
「褒めても駄目。薬出すからちゃんと飲みきってね」
「褒めてるんじゃない。本当のことだ」
「ありがとう。今言った事聞いてた?」
「薬は飲みきる」
「良く出来ました。もういいわ。気をつけてね」
「ああ。助かった」
窓から来た患者は入って来たときと同じように窓から飛び出していく。
サクラはそれを見送って部屋を出る。
明け方のことだった。
サクラは私室の窓も鍵も閉めることはしない。
ときどきこうして客が来るし、盗みに入る者もまずいない。
いたとしても盗まれて困る類のものには忍術を施してあるのでサクラ以外の人間にはまず触れる事さえ出来ないだろう。
そして何より、ここがどこであるのか知らない者は里内に存在しない。
はたけカカシが相続したはたけの家である。
カカシ当人はまさか自分がここへ戻る日が来ようとは思ってもみなかったので、人生何が起こるか分からない。
部屋のひとつをサクラのために書斎として開けるとあっという間に医療研究のための部屋になった。
たくさんの資料やカカシには名前も分からない草や、そもそもの原料を想像出来ない粉やらが大量に棚に並んでいる。
階段を下りて居間にやって来たサクラは食卓に並べられた朝食とカカシをみて、にっこり笑った。
「おはよう、カカシさん」
「おはよう、サクラ。コーヒー、牛乳、豆乳?」
「コーヒー」
「了解」
居間には淹れたてのコーヒーの香りが既にしていて、その香ばしさに他に選択肢がなかった。
コーヒーを運び二人席についたところで手を合わせて箸を取る。
「夜勤は?」
「つつがなく。サクラは眠れたの?」
「大丈夫。起こされたのさっきだから。暗部忙しいの?」
「さてね……祭りに他国の要人を招待しているからそのせいかもしれない」
「ふーん……」
言えない何かか、本当か、知らないのか推し量れず相槌を打ってサクラはハムエッグをつついた。
「あいつ玄関から入れって言ってよ、サクラ」
「言ってるわよ。遠慮してるのかしらね」
「遠慮してるなら玄関から入るでしょうよ? サクラは窓閉めなさい」
「閉めたって無駄でしょ。上下左右開閉出来るところは基本、全部出入口だって子供の頃から思ってるから」
職業病といえるかもしれない。目的の為に一番安全で一番近いルートを選ぶ。
「カカシさんが言ったら?」
「聞くわけないし、嫌だよ」
「なんで?」
「弟子に向かって、俺の嫁だって分かってんでしょ? 部屋に入るのやめてよとか恥ずかしくて言えない」
「その弟子と結婚したひと誰ですか?」