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□子犬とワルツ
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「お前ら、伏せって言ったら良しっていうまで伏せだから」

ナルトの方をみたり、ころころ転がったり、好き勝手し始めた子犬にそういうと揃って地に伏せてみせる。

「あいつ任務帰りで色々な匂いがしたでしょ? そういうのにも慣れないといけないから今日は里外に行くよ。でも私を心配してくれたのはうれしかった、ありがとうね」

わん! わん!

伏せたままで答える子犬たちをしゃがんで撫でながら私は小さくなっていくナルトの背中を見つめた。

ときどきナルトは私の腰に巻きついたり、気配を消し去って背後を取ってはすっかり低くなった声で吐息交じりに囁いてみたりする。

悪戯なのか、試しているのか。
その度に私の身体はナルトが好きだと反応を返そうとした。

必死に耐えているが気が付かれていないとは限らない。

「参ったね」

独り言は風と子犬の声に掻き消されたが、私に宿った気持ちは大きく育つばかりだった。

私が先生でなければ、ナルトとの歳が近ければ何も考えずにいられただろう。

ナルトだっていつまでも私を追ってなどいない。

だから何もせず、あの子が離れていくのを待つ。

その痛みにはきっと耐えられるだろう。
私はいくらも失ってきたのだから。

「さあ、行こうか。日が暮れる前には里に帰るよ」

元気良く返事をして子犬たちは私の足元から離れずに歩き出す。

術を教えて。修行につきあって。

そう言って纏わり付いてくる幼かったナルトを思い出して、ひどく切ない気分になる。

まったくらしくなかった。
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