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□日常
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受付の列に並んだサクラを、遠くのカウンターの内にいるナルトがいち早くみつけて大きく手を振ってくる。

軽く振り返してサクラは

「仕事しなさいよ、ばーか」

と唇の動きだけで伝えた。

互いにいい年齢になったけれど、ナルトの側に来ると十代の子供の頃の感覚が戻って来る。

失われることがない無邪気さと、まっすぐな意志。

受け継がれてきた想いをみるような気がする。

何度でも立ち上がれるのだと思う。

「サクラちゃん、もうさー、ずっとDランクばっかじゃん。もっと忍らしい任務とかあるだろ?」

受付に、サクラの番が回って来ると開口一番ナルトが言った。

「全部、忍の仕事! 身の丈に合わない任務なんて以っての外! あんたいい加減にしないとぶつわよ!」

「えー、つまんないってばよ。サクラちゃん固い」

「固くていいの! いいから日帰りDランク! さっさと寄越して」

今にも机を叩き壊しそうな剣幕でも誰も怯んだりしていない。

日常茶飯事であったし、ナルトとサクラの関係を知っている者がほとんどだから、相変わらずだな……という呆れや仲の良さにクスリと笑いがこぼれる。

新たな火影と気心の知れた同じ師を持つくのいちがじゃれている様子は年寄りには自来也と綱手を思い起こさせ、若い者には親しみと安心感をもたらす。

「じゃあ、これ。迷い猫捕獲! 里中逃げ回って飼い主んとこ、帰って来ないって絶対飼い主嫌われてんだろ! しかも今月三回目だってばよ……」

懐かしい、猫を追う任務に二人は視線を合わせて笑った。

猫を傷つけることなく捕まえることは、なかなかに難しい。

「行ってらっしゃい、サクラちゃん」

「行ってきます」

書類にサインをし、ひらり手を振り、身を翻す。

受付を出て、弟子である子供たちの元へサクラは歩きはじめた。

見上げた晴天の空に、墨で描かれたサイの操る鳥が鳴いている。

伝令か、偵察に行くのだろう。

たくさんのひとの努力で里の平穏は守られている。

サクラが幼かった頃も気づかないだけでそうだった。

今は多くを担い、幾つかを失い、この里の忍として立っている。

この地に生きて、この地で死ぬまで、彼らと共にありたい。

サクラは改めて強く思って、軽快に地面を蹴った。



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