お題
□見知らぬ場所、見知らぬ自分
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「ですが…私は今恐れています。何故なら私はこの場所を知らない、貴方を知らない
そして自分を知らない」
リオンの言葉は絶望感そのものだった
場所や他人を知らないのはどうにでもなるが、自分自身がわからない…
生きている者にとってこれほどの恐怖はない
「大丈夫。知らないなら学べばいい、俺のことが分からないなら教える
…勿論、リオン自身のことも」
そう言ってレッドは、コートのポケットから何かを取り出す
そしてそれをリオンの掌へと落とす
それは…金平糖
「それ、やるよ。…帰るぞ」
「はい」
自分の掌にある小さな金平糖を見る
(「金平糖ってモノは俺の好きなモノ
…だから、お前も好きになれ」)
瞬間、脳裏に浮かんだ何故か懐かしい言葉
多分…これは記憶を失う前の自分の大切な思い出
それが自分には解る(だから言える)
「レッドさんっ!!」
自分より前を歩くレッドに届くように声を出す
呼び声に反応した彼はこっちを向く…金色の瞳がリオンを見る
「さっき、私は恐れていると言いました。でも、その恐怖は何れ消えるでしょう。私には金平糖がある、そして何より…
レッドが…いるからです」
この言葉…この想いは、今のリオンが言える本音
そして本音と共に生まれたひとつの感情
きっと、記憶を失う前の自分も持っていたであろう感情
だから…
記憶が戻っても、戻らなくても貴方に告げようと思う
「大好き 愛してる」 と。
end.
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