Clap
□止められない想い
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君に『好き』だと伝えたあの日から、俺の中で何かが変わった。一度言葉にしてしまった想いは、もう胸の内にとどめておくことなんてできなくて、どんどんと溢れだす。
君と一緒に居られれば、君が俺を好きでいてくれれば、それで幸せだったのに。
すぐにそれだけじゃ足りなくなって、君と手を繋ぎたくなった。
君と手を繋いだら、今度は君を抱きしめたくなった。
君を抱き締めてもまだ足りなくて、俺だけの君が欲しくなった。
こんなはずじゃなかったのに。俺は君を……ルルのことを、誰よりも大切にしたかったはずなのに。
止められない想いを
「私の髪に何かついてる?」
「え…?あ、ううん。何でもないんだ」
にこにことケーキをつついていたルルが俺の視線に気づいて顔を上げた。
不思議そうに首をかしげると、髪をまとめるリボンがひらりと揺れる。
「もうっ!!また魔法のこと、考えてたんでしょ?せっかくのデートなのよ?」
「ん?それは違うよ。ルルの事を考えてたんだから」
本当のことは言えるわけない。そのリボンをほどきたいと思っていたなんて。
どうにか最もらしい言葉で応えると、ルルは恥ずかしそうに頬を染めるてにっこりと幸せそうに微笑んだ。
「ふふっ…ね、何考えてたのか聞かせてくれる?」
「ええと、ごめん。それは言えない、かな。ほら、ルル?あーん、して?」
嘘をつけない代わりに、俺はケーキをルルに差し出すと、彼女は「しょうがないなぁ、ごまかされてあげるわ」と呟いて、ぱくりとケーキをほおばった。
…いつもしているはずの何気ない行為なのに、一度意識がそっちに行ってしまうと、ルルのうっすらと開いた口唇がやけに扇情的に見える。
そうとう重症だ。
欲しいなら、求めてもいいんじゃないか。
そう思わないわけでもなかった。俺とルルは恋人同士なんだし、多分、俺が求めればルルは応じてくれると思う。
でも、どこか違和感を感じた。今、止められない想いのままにルルを俺だけのものにして、そこで俺は満足するのだろうか。
もっと、もっと先の…求めてはいけない場所まで求めてしまうんじゃないか。
…ルルを傷つけるような行為をしてしまうんじゃないか。
「…ユリウス?なんだか今日はぼーっとしてるみたいだけど、大丈夫?」
「大丈夫だよ。さて、次はどこに行こうか?」
「んー…そうね…」
カフェを出ると自然とルルの手が俺の手を握った。
その手は、小さくて、温かい。
…うん。まだ、大丈夫。
良く考えたら、焦る必要なんてない。
だから、もう少し。もう少し君と俺が大人になるまでこのままでいよう。
手を繋いで街を歩いて。
二人きりになったら、抱き締めてキスをしよう。
そして、いつか。
朝一番に君の顔を見られる日を楽しみにしていよう。
胸に秘めて