Clap
□小さな幸せ
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最近思うこと。
ラギはすごくかっこよくて、
意外と真面目で。
ちょっとだけ、カワイイ。
小さな幸せ
明日の授業のために図書室で資料を借りて帰ろうとした時だった。
目に入ったのは燃えるような赤い髪。
こちらに背を向けて机に座っていて、まだ私には気付いていないらしい。
かなり集中して厚い本のページに視線を落としている。
そんなラギの姿に悪戯心が顔を出した私は、そおっとラギに近づいて、とんとん、と彼の肩を叩いた。
ぷにゅ。
「…おい、ルル。手ぇ離せ」
無防備に振り向いたラギのほっぺたは、私の指で見事にへこんだ。
そう、ラギはこういう悪戯に意外と引っかかるのだ。そういうところが、すごく可愛い。
もちろん、今回のへこんだほっぺたのラギも可愛い。
何が起きたのか理解できなかったのだろう。ちょっと間をおいて、ラギは呆れたようにため息をついた。
「えへへ、いたずら成功っ!!何読んでるの?」
ちょっと名残惜しかったけれど、手を下ろしてラギの読んでいた本を覗き込むと、どうやら歴史の本だ。
「レポートの課題。マジめんどくせー…お前は?」
「私は明日の授業の資料を借りに来たの。ね、ラギが終わるの待っててもいい?」
「あ?別にいいけど、まだ終わんねーから遅くなんぞ?」
「大丈夫!!私も勉強するし、ラギがいるから!!」
一緒に居られる時間がうれしくて、いそいそとラギの隣の椅子にすとん、と座ると、隣でがたん、とラギは慌てて椅子を引いて立ち上がった。
「お、おまえっ!!」
「え!?なに?どうかした?」
顔を赤らめるラギにどの行動がいけなかったのかと考えるけど、私はただ椅子に座っただけ。
別にスカートもめくれてない。
「な、なんでそこなんだよ!!ふつー、向かいに座んだろーが!!」
「えっ、そ…そう?ごめんなさい」
そう言われれば、そんな気もして向かいに座り直したけれど、隣に座っただけでどうしてそんなにラギは慌てたのだろう。
「いや、別に…あ、謝ることじゃねーけど……隣はちけーだろ…」
「え?」
「な、なんでもねーよっ!!ほら、こっち見てねーで勉強しろよ!!」
ぼそっと呟かれた言葉。
…隣の席だよ?
たったそのくらいの距離で慌てるのはきっと私だから。
そう思うと、やっぱり可愛い。
人もまばらになって静かになった図書室。ちらり、と本から顔をあげてラギを盗み見ると、ラギは真剣な表情で文字を追っている。
ラギを見ているだけで幸せになれるのはどうしてなんだろう。
頬杖をついている腕はがっしりとしていて、いつも私を守ってくれる。
大きな手は、骨ばって硬いけど、優しく頭を撫でてくれる。そして…
「…なんだよ。飽きたか?もうちょっとで終わっからよ」
「ううん。ね、ラギ?手、つないでね?」
繋ぐ手は、私とラギをもっと近づけてくれる。
ラギはまた恥ずかしがって本に視線を落としてしまうけれど、ちゃんと聞こえた「おう」という返事。
やっぱりかっこよくて、ちょっとだけ可愛い。そんなラギと一緒に過ごす時間。
それが私の小さな幸せ