Clap

□Other Side of Moon
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Other side of Moon



夜の庭園は花々が月明かりに輝いていて、僕が現実のプレッシャーからしばし離れられることができる空間だった。

がらでもないけれど、ベンチに座って何も考えず、ただそこに存在している意味も無い時間が好きだった。


けれど、今は…














「どうしてあなたがここに居るんですか…」


いつものことながら、ルルの行動は僕には予想できない。煌々とあたりを照らす満月は既に僕たちの真上で輝いている。

つまりは、一般生徒が出歩いていいような時間出ないのだ。それも女性が。


「だって、窓からエストが歩いてるのが見えたから…」

「だからってこんな夜中に一人で外に出ないで下さい」

「心配してくれてるの?」

「…そうですよ。あなたがいつも無鉄砲だから」


一瞬どう答えようか悩んだが、なんだかそれも面倒になって僕は素直に答えた。

こんな夜のせいだ。

そう責任を押しつけて。


「…うれしいな。私はわかってるからね?エストが本当はすっごく優しくて恥ずかしがり屋さんだってこと」

「違います。僕はそんな人間ではありません」


なにを根拠にそんなことを言うのか、彼女は悪戯っぽく僕に笑いかけて隣に腰掛けた。

ふわりと甘い香りが広がり、身体の左側だけがほんのりとあたたかくなる。


「もう、素直じゃないんだから。一番近くで見てる私が言うんだからエストはそういう人だよ」

「…そうですか」


どうして彼女はこうも簡単に僕の時間に入ってこれるのだろう。しかも、一人で過ごす時間以上に安心している自分に気付かされてうまく言葉が出て来なくなる。


「…寒くはありませんか?」


そんな僕らを先日までの暑さが嘘のように秋の澄んだ夜風がなでていく。


「んー…上着着てるから大丈夫だけど…あのね?」

「…なんですか?」


寒くないといいながらもぞもぞとしながらルルが首をかしげる。そんな仕草がかわいらしいと思ってしまう僕は相当だろう。


「手…握っていい?ほらっ、その…手、冷たいから…」

「やはり、僕はあなたが思っているような性格では無いようです」


膝の上で握られたルルの両手を包むように握りながら、僕はそっと彼女の唇にキスを落とした。





  いつもは見えない意外な一面
 
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