Long
□狭間
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「おっと…」
気配を殺して標的の眠るベッドへと近づいた俺に、異国情緒漂う湾曲した剣が突き付けれた。
…でも、残念。
かっこつけても王子様は王子サマ。
その刃は俺の目の前の空間を切り裂いただけ。
『…誰の差し金だ』
低く闇を震わす異国の響きを持った声からは一切の恐怖も感じられない。ただ、威厳に満ちている。
「こちらの国の者なのか?…誰の差し金だと聞いている」
こちらに来た時よりもずいぶんと上達した言葉遣いになった。
あの馬鹿みたいなイントネーションと言葉の選び方はおもしろかったんだが…
そんなことを考えながら俺は第二王子と十分な間をとり、退路を確保しつつ、預かった封書を投げてやった。
本当はここで殺してしまっても問題はなかったのだけれど。
これで今夜の仕事は終わり。俺は身をひるがえして窓から外の道へと降りた。王子様はと言えば、流石というべきか…追ってくる様子はない。
…さて、あいつはこのことを知ったらどんな顔をするかな?
俺はルルの反応を期待しながら、俺は深夜、通いなれた寮の部屋へと戻った。