Long

□過保護な彼
1ページ/6ページ


「〜〜っ!!馬鹿!!アルバロのばかばかばかっ!!」

「ったく、いい加減うるさい女だな…お前の行動は俺を困らせたいとしか思えないよ」

「どこがよ!!いつだって人を困らせるのはアルバロの方でしょ!?」


土曜日の夜の談話室、それは一週間で最も生徒が多い時間である。

出された課題をなんとか日中に終わらせて、明日をどう過ごそうかと、みんながわいわいと過ごすからだ。

…本来なら。


「それがなんだ。今その話は関係ないだろう。とにかく、先週俺がどれだけ心配したと思ってるんだ?」

「心配?嘘ばっかり。確かにちょっと迷惑かけたかもしれないけど、アルバロはつまらなそうにしてたじゃない」

「お前のあれは『ちょっと』とか『かも』っていうレベルじゃないがな。それに心配とつまらないと思うことは次元が違う。いいか、お前がどうしてもって言うなら止めないが、怪我をしたくなければ俺の目の届く範囲にいるんだな」


そう、本来なら華やいだ空気が流れる談話室だけど、今夜は誰もが口を閉ざして、異様な光景を見守っていた。

素直で可愛いルルの、見たこともないわがままで身勝手な態度。そして、それ以上にあり得ない、いつもの派手なアルバロがはがれ『本気』が見え隠れするアルバロ。

そのセリフはルルも、言っている本人も気付いていないようだが、聞いている方は端々に見え隠れするアルバロの庇護欲に、なんとも気恥ずかしくなる。


「そんなのお断りよ!!アルバロに守ってもらおうなんてこれっぽっちも考えてないわ」

「あぁ、そうかよ。じゃあ明日は諦めるんだな」


そんなセリフを最後にアルバロはルルに背を向けて、大股に談話室を去っていく。


「嫌よ!!別にアルバロが一緒じゃなくても大丈夫だわ。他に一緒に言ってくれる人がちゃんといるもの!!」


最後にそう叫んだルルに、アルバロは振り向いてちらりと冷たい視線を向けたが、結局何も言わずに行ってしまった。

ルルはしばらくアルバロが去って行った扉を睨んでいたが、そのままずんずんと怒りをあらわにしたまま、彼女も談話室を出て行った。


…嵐が去った談話室、皆がほっと息をついた。

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ