Long
□過保護な彼
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「〜〜っ!!馬鹿!!アルバロのばかばかばかっ!!」
「ったく、いい加減うるさい女だな…お前の行動は俺を困らせたいとしか思えないよ」
「どこがよ!!いつだって人を困らせるのはアルバロの方でしょ!?」
土曜日の夜の談話室、それは一週間で最も生徒が多い時間である。
出された課題をなんとか日中に終わらせて、明日をどう過ごそうかと、みんながわいわいと過ごすからだ。
…本来なら。
「それがなんだ。今その話は関係ないだろう。とにかく、先週俺がどれだけ心配したと思ってるんだ?」
「心配?嘘ばっかり。確かにちょっと迷惑かけたかもしれないけど、アルバロはつまらなそうにしてたじゃない」
「お前のあれは『ちょっと』とか『かも』っていうレベルじゃないがな。それに心配とつまらないと思うことは次元が違う。いいか、お前がどうしてもって言うなら止めないが、怪我をしたくなければ俺の目の届く範囲にいるんだな」
そう、本来なら華やいだ空気が流れる談話室だけど、今夜は誰もが口を閉ざして、異様な光景を見守っていた。
素直で可愛いルルの、見たこともないわがままで身勝手な態度。そして、それ以上にあり得ない、いつもの派手なアルバロがはがれ『本気』が見え隠れするアルバロ。
そのセリフはルルも、言っている本人も気付いていないようだが、聞いている方は端々に見え隠れするアルバロの庇護欲に、なんとも気恥ずかしくなる。
「そんなのお断りよ!!アルバロに守ってもらおうなんてこれっぽっちも考えてないわ」
「あぁ、そうかよ。じゃあ明日は諦めるんだな」
そんなセリフを最後にアルバロはルルに背を向けて、大股に談話室を去っていく。
「嫌よ!!別にアルバロが一緒じゃなくても大丈夫だわ。他に一緒に言ってくれる人がちゃんといるもの!!」
最後にそう叫んだルルに、アルバロは振り向いてちらりと冷たい視線を向けたが、結局何も言わずに行ってしまった。
ルルはしばらくアルバロが去って行った扉を睨んでいたが、そのままずんずんと怒りをあらわにしたまま、彼女も談話室を出て行った。
…嵐が去った談話室、皆がほっと息をついた。