Clap
□FD side story
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case.4 Est By Lagi
「はぁ、はぁ……ぎりぎり、間に合いそうだな」
俺は寮への道を走りながら呟いた。こんなに遅くなるつもりはなかったのだが、いつものように動物を構ってやっているうちに眠ってしまったらしい。寒さで目を覚ますと辺りはすでに薄暗く、門限が迫っていた。
――――
――
―
「うゎぁっ!!」
バンっという音とたてて俺は勢いよくエントランスの扉を開けた。
時間を確認すると夢中で走ってきたからか思ったよりも早くついたようだ。
俺はその事にほっとし、改めて声のしたほうをみた。
…やっべぇ、マジかよ…
そこにいたのは焦ったようなエスト、そしてニコニコと能天気に笑っているルルだった。
どうやら声をあげたのはエストのようだ。そのマントの端はルルにしっかりと捕まれている。
「…なんだ、お前らか…もう門限まで時間ねーぞ?」
俺は乱れた息を調えながら、エストの放つ気まずいオーラに気が付かないふりをした。
「…っ!!ほら、ルル!!ラギも待ってますから早く入って下さい」
「えっ…ちょっと待って、エスト!!」
俺の言葉にはっとしたようにエストは抵抗するルルをぎゅうぎゅうと女子寮の鏡に押し込んだ。
「…………」
ルルがいなくなると、エントランスにはなんともいえない沈黙が流れる。
「…その…邪魔して悪かったな」
「いえ…」
沈黙を破った俺の言葉にエストは恥ずかしいのだろう頬を少し染め、うつむいていた。
初めて見るその表情に俺は少し驚いた。
ルルの影響だろう、エストは以前よりずっと表情が豊かになった。
そう年齢の変わらない俺が言うのもあれだが、年相応の反応になんだか安心を覚えた。
「その…変な所を見せてしまってすみません。気にしないで下さい」
俺はなんとか場をおさめようとするエストの頭をぐしゃぐしゃて撫でた。
「お前、いい顔するようになったな。前よりずっといーぜ」
俺は戸惑うエストを横目に鏡をくぐった。
…なんていうか…俺、兄貴っぽくね?