Clap

□FD side story
3ページ/6ページ

 
case.3 Alvaro By Bilal

そろそろ消灯時間になる。月光を浴びて輝く花々があまりに美しくて、寮の庭に思っていたより長居をしてしまった。そう思いながら寮のエントランスに入ると鏡の前で誰かが抱き合っているようだ。きっと別れを惜しんでいるのであろう、そのまま近寄っていくのは無粋というものだ。

まだもう少しだけなら時間がある、そう思って外に出ようと踵を返したとたんに聞き知った声が聞こえて俺は足をとめて振り返った。


「…から、キス…か…キス……とか!!」


よく見れば思った通り、抱き合っていたのはルルとアルバロだった。それにしても…キス?何度もその言葉を繰り返すルルに、立ち聞きはよくないと思ったが、どうせアルバロは俺に気付いているのだからいいか、と開き直った。

しばらく何か会話をしたあと、ルルは自分の唇をアルバロの頬に押しつけて…まぁ、100歩譲って拙いキスをして鏡の中へ飛び込んで行った。残されたアルバロはいつも通りの笑みを浮かべてこちらを向いた。


「やぁ、殿下。入口をふさいで悪かったね」


「イイエ、かまいまセンよ?あなたも、やはりコイビトと別れるのはつらイでしょうカラ」


その言葉がなぜか気に障ったらしい。先ほどとまったく表情は変えていないがそんな気がした。


「そうだね、ああいう無防備な恋人を持つと悪い虫がつかないか心配なんだよ」


じゃあ、お先に。そう言い残してアルバロも鏡の中へと入っていった。俺はしばらくアルバロの言葉を思い返してそこにある真実を探したが今回はよくわからなかった。

時計を見ると消灯まであと数分しかない。俺は女子寮の鏡を振り返ってから、男子寮へとはいった。



  互いに難儀な相手を選んだものだ…


 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ