日和:短編
□これは甘味ですね
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のどかな風が吹くも、町は活気づいているここは日本という国の一角である。
そして、
「ダンゴ?ダンゴ…うーん聞いたことないけどなぁ…」
ブツブツと呟いている男は、ハリスの片腕としてこの国に来たヒュースケン。
先程 勝手過ぎる上司に勝手過ぎるお使いを頼まれたところで…この国の"ダンゴ"という甘い食べ物が食べたいそうだ。
「あの、」
「…!」
人に尋ねようにも、着ている物から珍しいので、そそくさとかわされてしまった。
うーん、これではいつまで経っても…。
ヒュースケンが立ち止まってキョロキョロとしていると赤い番傘が目に入った。
「あれは何だろう…?」
近付いていくと、着物を来た女の後ろ姿がせっせと掃除していた。
じっと、見ているとその人がくるりとこちらを向いた。
『あ…こんにちは。』
「こ、こんにちは。」
にっこりと花のような笑顔を向けられて、ヒュースケンは少し驚いた。
彼女は異人が平気のだろうか?
でも、これでやっと"ダンゴ"について聞けそうだ。
「あの、"ダンゴ"を買ってこいと頼まれて…でも僕、ダンゴとは何なのか…」
『団子、ですか?ふふ、ここは団子屋ですよ。』
「ほんとですか!よかった…」
なんと偶然にも、彼女は団子屋の店員らしい。
ヒュースケンはようやく見つかってほっと胸を撫で下ろした。
『たくさんありますよ。どれになさいますか?』
案内された店内で団子を選ぶ。
さっさと買って帰りたい、のが彼の本心だが、
「そ、そうですね…どれにしようかな…」
さっきからどうにもこの人が気になって仕方ない。
どれがどんな団子なのか分からないヒュースケンに、一種類ずつ『これはですね、』と一生懸命解説をしている。
ヒュースケンの目は団子ではなく、彼女を見つめていた。
(唇、かわいい…少し紅を塗っているのだろうか…首の、きれいな女性だな…でもやっぱり笑顔が、)
『もしもし?お客さま?』
「は、あ!す、すみません!」
『いえ。異国の食べ物ですもんね…よろしかったら私に選ばせてもらってもいいですか?』
「あ、ぜひお願いします!」
少し悩みながらもその女性は紙に一本ずつ入れて、丁寧に包んだ。
「ええと、お金は…」
『それ3枚で結構ですよ。慣れないと大変ですね。』
「あ、すみません。」
『はい、どうぞ。』
「あれ?二つ?」
『こっちの小さい包みはあなたに。勿論お代は頂いてません。よかったら召し上がって下さい。』
「えっいいんですか!?ありがとうございます!」
『はい。気にいって下さると嬉しいです。』
受け取った瞬間に、彼女の小さな手が触れる。
そこから全身に熱が広がっていくように感じる。
「ま、また来ます!」
『お待ちしています。』
にっこり。
なんだかドキドキして仕方なくて、ヒュースケンは店を出てから走って帰ったのだった。
(ん?君なんか顔赤い?)
(うわっハリスさん!あか、赤くなんかないですよ!)
(さては町でキュートな女性でも…)
(……!!)
(…え?え?ガチで?)
:END
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ガチです。
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