小説を書いて見ました

□癒される場所
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静かな夜。母が倒れてしまった。持病の発作が出てしまったのだ。私の住んでいる町は小さい村で、病院は隣町まで行かないと無い。父は車を走らせ、隣町の病院に行った。しかし時は既に遅かった。母は、帰らぬ人になった。
医者は「病院に来るのがもう少し早ければ…」
と言った。父はただただ立ちすくんでいた。私はただただ泣きじゃくっていた。

お葬式が終わり、私はふらふらと町が見渡せる高台に行った。そこには大きな木がそびえていた。昔お母さんが一度だけ、ここに連れてきてくれた事があった。この場所はお母さんの癒しの場所だと教えてくれた。
私はこの木の下から町を見ていた。すると、幼なじみの高山直人がやってきた。

彼はバツが悪そうに私の顔を見ていた。散歩の最中だと言っていた。余りにも私の苦しそうな顔を見て言った。
「泣きたい時は声を出して泣いても良いんだよ」
そう言って、ハンカチを差し出した。

思わず押さえていた気持ちが溢れ出して、声を出して泣いた。彼は優しく私を見守っていた。

気持ちが落ち着くと、ふと我に帰り、恥ずかしくなった。
「なおちゃん…こめんね。」
思わず謝ってしまった。彼は微笑むだけだった。

彼の家と私の家は隣同士で、小さい頃から一緒だった。よく亡くなったお母さんに二人して怒られたものだ。そんな事を思い出していると、直人が言った。
「俺…この町の医者になるおまえの母ちゃん見たいなひとがもう出ない様に、医者になって、この町の人を助ける
そう言って、直人は私を見つめた。
「じゃあ、お医者さんには看護婦さんが必要ね。私この町の看護婦さんになるわ。一緒にやれば一石二鳥ね」
そう言って、私は笑って見せた。
「じゃあ約束な
そう言って、彼は自転車でこの場をさって言った。

小学校5年の暑い夏の事だった。
 

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