企画

□終わらないおにごっこ
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「ちょっと待ちなさいってば!逃げるな!」

「逃げるなって言われて止まる人がいますー?」

「ちょ!さりげなくスピード上げるな馬鹿!」



…なぜ私がこんな事をしているかというと、30分前に至る。


その時私は任務から帰ってきてくたくたな状態。シャワーを浴びて、疲れた体を癒した。その後だ。

私はかなりの空腹だった。任務前に、任務後に食べるための有名なあの店のケーキを買っておいたのだ。定番のショートケーキ、なめらかなレアチーズケーキ、甘すぎないチョコレートケーキ、さっぱりフルーツタルトにおまけのシュークリーム。

期待して冷蔵庫を開けた。


………ないだと?



そんな筈はない、冷蔵庫を一旦閉めてからまた開けた。

やはりない。



するとなると誰かが食べたという事になる。


ボスなら何も言うまい。いや、言えまい。
文句を言ったところでかっ消されるのがオチだ。

スクアーロが食べたなら、また買ってくる事で許そう、何故なら彼も苦労しているから。

ルッスーリアはないと断言しても良い。
彼、いや彼女は自分で作る筈だから。

レヴィはあり得るかも。
意外にね。
あいつが食べてたら半殺しにしてやる。
んでもって新しく買い直させよう。

ベルの可能性は充分高い。
王子気質のあいつの事だ、勝手に人のモノなんて食べるだろう。



…なんて考えてたら現れたのがコイツ。



「あれっフラン」

「センパイじゃないですかー。こんにちはー」


呑気に挨拶をするフランの顔をよーく見てみると……


付いているではないか。


「生クリーム!」


「…はいー?」



これではっきりと分かった。



犯人はコイツだ!



「フラン、まさかここにあったケーキ食べた?」


私は冷蔵庫を指した。
フランは悪びれる様子もなく、しれっとした。


「ああ、はいー」



な ん で 食 べ た ! ?



「お前か馬鹿フラン!」


殴り掛かろうとすればフランはひょい、と避けた。

…ああコイツも幹部だったか。


「すいませんでしたー」


「ちょ、待て!」



素早くフランは逃げた。
それを私は追いかけた。



「待てこんにゃろう!私がどんだけ楽しみにしてたと思ってるんだー!」


「センパイそんなに楽しみにしてたんですかー?ぷぷっ、太りますよー」


「っ……!カエルの癖に!」


「別に好きで被ってるワケじゃありませんからー。堕王子が言うから仕方なくです、そこ勘違いしないで下さいー」



くっそぅ!
生意気な口だ……!

しかも全然追い付かないし……てかむしろ遠ざかってない?



「待てってば!今なら買い直す事で許してあげるから!」


「…やっぱ馬鹿ですねーセンパイ」


「なっ…!」



センパイを馬鹿扱いするなんて!
コイツくらいだよ生意気コーハイ!



「ホントアホヅラですねー」


「おいコラそろそろ黙れ」



コイツの相手をするのは疲れる。
しかも任務後。
体力はかなり減っている。


「怖いですよー。仮にも女なんですからもうちょっと女らしくしたらどうですかー?」


「…こんの減らず口が!」



そろそろ面倒くさくなってきた。
もう良いかな?


愛用の銃をぶっ放す用意は完璧です。



「フランそろそろ止まれ、そして私に謝れ」


「ゲッ……本気だ」


「まだ逃げる気かてめぇ!本当に許さないから!」



容赦なくぶっ放される銃弾を見てもまだすばしっこく逃げるフランに苛つく。

あーケーキ食べたい。
本来なら私があの店のケーキをあんなに食べれたのに!

フランが憎い!
まじでムカつく!



「待ちなさいっ!」


「ゲロッ」



ちょっと近付いたと思えばまた離される。

まさかコイツ、手加減して走ってる?

んなまさか。


「走るの速いですねー。まぁミーより遅いけど」



ああまた距離が遠ざかっていく。

あれ、私の反応見て面白がってない?
なんだコイツ!



「ちょっと本当に待ってよ!二発か三発だけ殴らせてよ!」


「鬼さんこちらー、手の鳴る方へー、ですよー」



終わらない
おにごっこ




「ちょっとセンパーイ。良い話があるんですけど」


「何よ!」


「ミーの奢りでケーキバイキングでチャラにしませんかー?」


「……仕方ないなぁ」



(なんとも単純なセンパイ……!)






◆素敵企画『まんざい!』様に提出。

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