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□一寸先は甘い罠
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白蘭さんはしつこい。
毎日のように食事に誘ってくるし、同じようにデートにも誘ってくる。
たまにわたしの部屋に不法侵入していたりもする。
他にも、わたしの働く隊でくつろいでいたり。
全くもってしつこすぎる。
今日もいつもと同じ、食堂で入江隊長と昼食を食べていたら、白蘭さんは現れ、わたしの隣に座り、デートの誘いをしてきた。
慣れたわたしはスルー。
彼をいないもののように扱った。
すると彼、白蘭さんはとんでもない行動に出たのだ。
「ねぇ正チャン」
「なんですか白蘭サン」
「この子ちょうだい」
「…はい?」
「欲しいんだよね〜」
「彼女は有望な人材ですから出来れば断りたいんですけど」
「うん。でも…」
「出来ないんですよね。分かりました」
「ホントに!?さすが正チャン、わかってるな〜」
「貸しが出来ましたからね」
「はいはい」
わたしはというと目を見開いてこのやり取りを見ていた。
なにそれ。
「じゃあ失礼します」
「ばいばーい」
食事を終えた入江隊長がお盆を持って去っていった。
わたしはただ呆然とそれを見ていることしか出来なかった。
当然だ、頭の思考回路は止まっているんだから。
「さて」
隣の白蘭さんが立ち上がった。
そしてにっこりと笑う。
「行こうか」
彼はわたしの手を引っ張り、あっという間に自室まで連れ込んだ。
「ここが僕の部屋だよ」
「…はあ」
だから何?
言いたいけど黙っておく。
この人に逆らえば、こんな下っ端のわたしはすぐに殺されてしまうだろう。
「本題に入るけど」
相変わらずわたしはそっぽを向いたまま。
そりゃあ不服ですよ、あまりにも理不尽。
「君は今日から僕の秘書だから」
「…え?」
「あれ、聞こえなかった?秘書だよ秘書」
どうしてわたしが?
頭の中をいろんな思考がぐるぐると駆け巡る。
「僕さぁ、君を気に入っちゃって」
「………」
「顔は言うまでもなく綺麗だし。何より性格かな。なに言っても動じないところとか」
「…冷たい人が好みなんですか」
「ううん、全然。でもさぁ、冷たい子を落として僕の下部にするのって、いつも変な気分なんだよね。なんかつまんなくなっちゃって」
「嫌な趣味ですね」
結局わたしも白蘭さんの遊びの道具か。
終わったなわたし。
「でも君は違う気がするんだ」
「…え?」
「君ならずっと可愛がれる気がする」
白蘭さんの顔を見れば、彼には笑顔が浮かんでいた。
今までに見たような作り物のような笑顔じゃない。
初めてみた、純粋な笑顔。
白蘭さんを、綺麗だと思った。
「ねえ、素直になりなよ」
彼の声が、わたしの耳に響き、甘く痺れる。
「可愛がってあげる」
…この美しい悪魔の手を取ったわたしは、赦されるのでしょうか?
一寸先は甘い罠
◆今回は白と黒の間の白蘭さん。ひねくれヒロインは愛に溺れるでしょう←
次は多分黒白蘭さんを書きます
title:Largo