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□臆病な彼女に愛の制裁を
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僕の彼女は臆病だ。


「あの、雲雀くん」

「なに」

「…やっぱりなんでもないです」

「なにって訊いたでしょ」


僕が少し睨みをきかせると、彼女の肩がびくっと揺れる。


「言わなきゃ咬み殺すよ」


これだけ忠告をすれば、彼女は仕方なく小さな声で話し始める。


「…日曜日」

「うん」

「一緒にどこか行けたらいいなぁって」

「なんだそんなこと」


そんなことを言うのにこの子はびくついてたのか。
まったく。


「そんなことって…」

「そんなことだよ」

「………」

「なに」


なにか言いたげな目で睨みつける彼女だが、まったく効かない。
怖くないし、無意味だ。


「言いたいことがあるならはっきり言いなよ」

「………ない」

「へえ」


僕がそう言うと、彼女は黙り込んだ。
沈黙が応接室を囲む。


「どこか行きたいところでもあるんでしょ」

「………」


イラッ。
黙りこくる彼女にいらついた。
少しぐらい喋れよ。


「あのさ」

「………」

「言いたいことは言ってくれなきゃ伝わらないよ」


言っても俯くだけの彼女に、はあ、とため息をついた。
同時に、がたん、と椅子の音が響いた。


「だ…って」


今にも彼女は泣きそうだった。
誰が泣かせたの?
咬み殺してやるよ。
泣かせた本人は他の誰でもない、この僕だ。


「雲雀くん、私に冷たいから、怖くて」

「………」

「嫌われてるのかなって、いつも思ってるし、」


彼女はついにはしゃくりをあげて泣き始めた。
もう声を出すのは不可能だった。


「…そう」


僕がそれだけ言うと、また肩をびくりと動かした。

僕が彼女を優しく抱き締めると、彼女は驚いて一瞬泣き止んだ。


「君はさ、勘違いしてるよ」

「…え?」

「僕は君を嫌ってない。君が冷たいと感じるのは、僕に本音をさらけ出してくれないからだよ」

「…本音なんか出したら、きっと嫌われちゃう」

「馬鹿だね」


僕は彼女の耳元で囁く。
その途端、彼女の耳と顔は真っ赤に染まる。


「…それ、本当?」

「僕は嘘はつかないよ」


“もっと好きになるさ。
それに、素直になったら、君が望むことはなんでもしてあげる”


「…じゃあひとつだけ」

「ひとつでいいの?」

「うん」


控えめだな。
多分まだ、怖いんだろう。
臆病だから。


「なに、言ってごらん」


彼女は真っ赤な顔で、俯きながら言った。


「もっと愛して…?」


この子は凶器だ。
僕の心臓を止める気かい?

仕方ないからもっと愛してあげよう。
嫌というほどに。



臆病な彼女に
愛の制裁を





◆久しぶりの委員長。
多分スランプです
リベンジします

title:Largo


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