*日常シリーズ*

□ある夜の風景。
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■日常、ある夜の風景。■
 
 
夕暮れが近付いていました。
霊勢の落ち着いているこのサマンガン街道周辺では、天気が良ければ日中は青空が、夕方には夕焼け空が、時間の経過と共に空を変化させます。
日の沈んでいく西側は濃く、ミラ様御一行の上空は薄くオレンジ色で染められています。遠く東側の空からは、夜を知らせる紫色の空がジワジワと迫っています。
 
「これならば、日が沈んでしまう前にサマンガン海停へ着けそうですね」
「そうだな。着いたらまずは食事にしよう」
「「賛成ー!」」
 
ミラ様の提案に、レイアちゃん、エリーゼ姫が嬉々として賛同しました。
 
「わたし、またクリーム牛丼が食べたい!」
「うむ、アレは美味かったな」
「わたしは…クリームコロッケパフェが食べたい…です」
「デザートだけじゃ駄目だよ。もっと色々食べなくちゃっ」
「それならば、クリーム牛丼もクリームコロッケパフェも他の物も食べればいいではないか。体を作るための食事は大事だぞ、エリーゼ」
「は、はい…」
 
確かに食事は大事ですが、偏った食事もいかがなものかと思われます。
思っても、盛り上がる女性陣にツッコミが入れられる勇気あるツワモノは、男性陣の中にはいなかったようです。
アルヴィンさんは苦笑しながら、少し声を潜めて言いました。
 
「女性陣は元気と言うか、食い意地がはってると言うか…」
「腹が減っては戦はできぬ、ですよ、アルヴィンさん」
 
ローエンおじいちゃんの言葉に、アルヴィンさんは「まあね」と一応同意しました。
 
「若い方々には充分体力をつけてもらって、しっかり戦ってもらわなければいけませんからね。期待していますよ」
「なに、俺?まぁ…やることはやるけど、そういうのは俺よりも育ち盛り伸び盛りの奴に言うもんじゃない?なあ、ジュード君」
 
アルヴィンさんは、前を歩いていたジュード君に話を振りました。
しかし
 
「‥‥」
 
ジュード君は無反応でした。
 
「あれ…、どうしたよ。まさか腹が減って喋る気力も無いとか?」
 
からかい気味に言って、アルヴィンさんは少し大股になってジュード君の横に並びました。
そして、ガシッ、と肩を組みながら
 
「今のうちに食いたいもん言っとかないと、妙なもん食わされるぞ?」
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