*日常シリーズ*

□あるイベントの日の風景1。
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■日常、あるイベントの日の風景1。


「ところでジュード君は明日、アルフレドにもちろん渡すんだよね?ああ言わなくても結構、わかってるから。という事は当然今日作るわけだよね?だったら是非ともこのくすり…じゃなくてシロップを隠し味に使ってほしいんだ。え、薬って聞こえた?聞き間違えだって、あはは。大丈夫、全っ然怪しい物じゃないよ〜。無臭だから隠し味として入れても全く気にならないはずだし味にも何の影響はないよ。え、それじゃぁ隠し味にはならない?ははは、味覚に影響しない心に影響する隠し味だよ。と言うわけで、使ってみない?」
「遠慮しておきます」

ジュード君は即答しました。
理由はわかりませんが、断らなければいけないと直感が告げたのです。

「うーん、駄目か。まぁそれなら仕方ない」

バランさんはあっさり引き下がりました。
あまり残念がっていない様子で少し肩を竦める姿が、ジュード君にはアルヴィンさんに似ているように見えました。
アルヴィンさんとバランさんは、年は少し離れていますし外見はかなり違いますし性格はもしかしたらバランさんの方が悪いくらいかもしれません(とジュード君はアルヴィンさんから聞かされています。)
それでも“従兄弟”の2人が似ているように見えたのは、ジュード君が無意識のうちにバランさんにアルヴィンさんを投影しているから…かもしれません。

(従兄弟でも似るところってあるんだなぁ)

と、ジュード君は自己完結。
それよりもと、疑問に思ったことをバランさんにぶつけてみます。

「あの、僕がアルヴィンに何を渡すんですか?」

すると「え?」とバランさんは首を傾げました。

「何をって…あれ?ジュード君は明日が何の日か知ってるでしょ?」
「いえ…」

とりあえずジュード君の中でわかっている明日は、依頼された“ガリィ狩りを狩る日”です。それ以外では思いつきません。
バランさんは少し考えてから「もしかして…」と呟きました。

「リーゼ・マクシアにはこの文化は伝わっていない…?そうか、きっとそうだ、うんっ」

一人納得するバランさんに、ジュード君の頭の上には疑問符がポンポン飛びます。
バランさんを“面白い人”と思っていたジュード君ですが、そこに“変人変わった人”も付け加えたくなりました。

「環境だけでなく大衆文化にも違いは見られるのか。ということは、向こうには向こう独自の文化もあ」
「あの〜、バランさん?」

止めに入らなければ、何所までも何所までも思考と考究の世界に入り込んでしまいそうです。
ジュード君が控え目に声を掛けると、

「ああ、ゴメンゴメン。ついうっかり考え事をしちゃったよ」

笑うバランさんです。
考え事は頭の中で考えるから考え事じゃないのか、というツッコミは敢えて飲み込むことにします。

「それで、明日って何の日なんですか?エレンピオスでは何かの記念日ですか?」
「記念日って程じゃないけど、バレンタインっていうイベントがある日なんだ」
「バレンタイン?」

聞き慣れない言葉に、綺麗な琥珀色の目を2度ほどぱちくりさせて、ジュード君はきょとりとするのでした。
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