with love

□秘め恋。
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街路樹のイルミネーション、次から次へと視界に飛び込む光のオブジェをふたりで楽しむ。
当然のように繋がれたままの左手にある温もりは、今や恥ずかしさや照れくささを通り越して安心でき、ボッスンと過ごすこの時間すべてがヒメコにとってたまらなく心地よかった。


しばらく歩き続けて、イルミネーションの終わりでもある、大きなクリスマスツリーのある広場に辿り着く。

「なんや、あっという間やったなぁ。」

クリスマスツリーの大きさに驚きながらも、ふと今まで歩いてきたところを振り返ると、相も変わらずキラキラと輝く中を楽しむたくさんの人。

「おい、これやる。」
「なに?」

ボッスンの声に向き直ると、ラッピングされた小さな包みを差し出されていた。
反射的に手をほどいて、両手でそれを受けとる。

「こ、これクリスマスプレゼント!?」
「…ん。」

目は合わない。
ボッスンは人指し指で頬をかきながら、小さく頷いた。

「開けてもい?」
「ん。」

アタシに戻ってきたボッスンの目を見てからリボンをほどき、包装紙が破れないようそっとシールを剥がしていく。
そして、現れたのは…

「わっヘアピンやん!かわいー!」
「へへっ。」
「つけてみてえぇ?」
「あぁ、もちろん!」

花の形を模した装飾にピンクの石がついたヘアピンを大事に大事に手に取って、分けた前髪に差し入れる。

「な、どない?」

安心したようにはにかむボッスンに、気恥ずかしさ半分嬉しさ半分で緊張しながら問いかける。

「…かわいー。」
「!?」
「え!?あっ…あー……まぁ、そのあれだ似合ってんよ!うん、すげー似合う!」

無意識で言ったんだろうか。
真っ赤になって今度は似合うと連呼するボッスンと、さっきの"かわいい"が頭から離れず真っ赤なアタシはもう限界というように熱い頬を両手で隠すように押さえる。
だって、まさかボッスンの口からアタシに向かって"かわいい"が返ってくるなんて思わない。
不意打ちすぎる。

唇を噛み締めて、一向に落ち着く気配のない熱とにやけてしまうどうしようもない頬を必死に抑え込みながら、声を絞り出す。

「…………とう。」
「え?」
「ありがとう!めちゃくちゃ嬉しい!」

(あかん…なんや恥ずかしすぎて泣きそうや……ボッスンの顔よう見ん。)

「あと、ごめん。今日アタシなんも用意してへんねん。」

恥ずかしさと嬉しさとない交ぜになって、つい矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。

「年明けまでちょぉ待っとってな?」

ここでようやく目の前のボッスンを見ると、 口許を左手で押さえ込んでいた。

「ボッスン?」

呼び掛けても頷くだけのボッスンを覗き込む。

「どないし…!?」

一瞬なにが起こったのかわからなかった。
「プレゼント今くれ」と囁かれたかと思ったら、 アタシの唇に柔らかなものがぶつかった。

「ヒメコ。」

それがボッスンの唇であると気づいたのは、そう声をかけられてからだ。

「なっ!なにしとん!!」

我に返ったように唇を隠しながら真っ赤になって叫ぶように問うと、

「…さっきのは謝んねー。でも、知っといてくれ。」

じっと見据えられて、息が詰まる。
なのに、血液がどくどくと脈打つのが耳の裏にうるさいほど聞こえておかしくなりそうだ。

「おれ、ヒメコのこと大好きだ。」

にかっと笑って伝えられる真っ直ぐな言葉に立ちくらみを覚えそうになる体をぐっと踏ん張って支える。

「…そんなん、」

(冗談でキスするほど酷い奴ちゃうことぐらいよぉ知っとる。)

「…そんなん、」

(アタシやってずっと、ずっと…)

「アタシもずっとボッスンのこと大好きや!」
負けじとにかっと笑ってみせると、ボッスンは緊張した面持ちから、ゆるゆると表情を和らげて、安心したようにはにかんだ。

「一緒か、おれら。」
「一緒や、アタシら。」

真っ赤な顔のままふたりで笑い合って、どちらからともなく唇を寄せる。
目を閉じても確かに感じる温もりが、ただただ愛しかった。


fin.

眩しいきみの柔さに溺れる




+もつ鍋つっつき隊さまへ!



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