with love

□egoistic hero
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そして、放課後。
スケット団の部室にお邪魔した。

ガラッ

「ぉわっ!?」
「結城さん!」
「こんにちは、ボッスンくん。ヒメコさん。メガネの人もこんにちは。」
『あぁ…』

なんとなく、違和感のある反応。
私が部室に行くといつも最初に驚いてくれるボッスンくんとヒメコさんはともかく、どうしてか今日はスイッチくんまで驚いているようだわ。

「…なにかしら?」
『今日は窓からじゃないんだな。』
「え、」

指摘されて気づく…今日は扉から入っていたことに。

「別に…そんな日もある、わ。そうでしょう?」
『ゆう「ははっだよなぁ〜これからも扉から入ってきてくれよな!」

なぜだか、たまらなくなって目を逸らす。
逸らした私を追うように彼の指がタイプする音が聞こえたけれど、逸らした先のボッスンくんがそれを掻き消してくれた。

「ふふふ、覚えておくわ。それで8禁ホラー賞は…………」

なにか言われる前に、聞かれる前にと話を切り出す。
…別に、いつものようなやりとりだけかもしれなかいけれど、それでも私はスイッチくんには何本も予防線を張っておきたいの。
そう思いながら、終始ホラー賞で投稿する内容等を詰めていく作業に熱くなった。

そして、ある程度固まってきたとき、ちょうど最終下校時刻10分前を知らせる音楽が流れる。
一段落着いたなぁ〜とヒメコさんと笑っていたボッスンくんは、その曲を聴いて「そろそろかえっか」と、また楽しそうに笑った。
とても楽しい時間だったから、私も嬉しくて「そうね」と、笑った。
…このときのスイッチくんは少し不機嫌で、でも、目が合ったときには少し笑ったように見えた。
もちろん、そんなこと今までなかったから単に見間違えかもしれないけれど。

みんなと下駄箱まで行くと、部室にいるときよりも外はずっと暗く感じた。
濃紺が黒に溶けるような色が広がっていて、見上げると星がとても綺麗だった。
そして、学校を後にする。
途中まではみんなと同じ方向だったから、ゆっくり歩きながら、優しいスケット団の会話を楽しんだ。
あたたかいやりとりに思わずふっと息を漏らすと、白い息が空気と混じりあって消える。
…………と、後ろからの視線を感じた。
できるだけ自然に振り返る。
濃紺の闇の中を確認するために目を凝らして。
すると…ぼやけながらも写る姿は、いつもと同じ…ずっと着いてくる人。
…どうしたらいい?
もうすぐボッスンくんは家に着くようだし、ヒメコさんはお母様と約束があると言っていた…スイッチくんには、何も知られたくない。

「ん、どした結城さん?」
「…いいえ、一瞬霊の気配がしたから。」
「「えっ!?」」
「あ、でも気のせいだったみたい。驚かせてごめんなさい。」

そう言うと安心したように笑って、再び前を向いて歩き出す。
よかったなぁと頷き合うボッスンくんとヒメコさんを見ながらこれ以上怖い思いはさせられないと声をかける。

「私、少し寄るところがあるのでここで失礼するわ。今日はとても楽しかった。ありがとう。」

急に言ったから、キョトンとしていたけれど、次の瞬間には

「オレも楽しかったぜ!また明日な!」
「気ぃつけて帰りやー!また明日!」

と、元気に笑って手を振ってくれた。
スイッチくんは何も言わない。
それを認めて、大きな道にでるために足早に歩く。
まだ、ついてくるだろうから。
鞄の内ポケットに入れていた防犯ブザーを出して、強く握り締めながら歩く。
この防犯ブザーが果たしてストーカーに効くのかどうかはわからないけれど、母が持っていなさいとくれた物で、今では一種、私のお守りのようになっている。

大丈夫、大丈夫、大丈夫

念じて、ひたすら歩く。
そして、ようやく人通りの多い道に出ようというとき。

「っ!」

グッと肩を捕まれた。
その手を振りほどこうと身を捩る………と、視界に入ったのはよく知る顔だった。



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