with love

□egoistic hero
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あぁ、今はもうすぐお昼休みかな。
今日は金曜日だから…18時すぎに出てくるはずだよね。
あぁ、一体どうしたらオレのことを見てくれるんだろう。

…オレは、こんなに君のことばかり考えて、君のことばかり見ているのに…

ねぇ、いい加減気づいてよ。
レイコさん。



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帰り道に見られている感覚を覚えたのはいつからだったかしら。
最初…と言っても、確か2週間ほど前だったと思うのだけれど…そのときは別に何とも思いはしなかった。
ただ、強いて言えば、単純な疑問として"見ていて楽しいのかしら?"と思うことがあるぐらい。
その程度、だったのに。
今は気になって、気になって…1人で帰るのが少し、怖い。

視線を送る"人"の存在に、気づいてしまったから。

以来、できるだけ友達と一緒に帰るようにしたり、下校時間をずらしたり、通学ルートを変えたりしているんだけど…友達と別れたあとにも必ずいるし、下校時間をどれだけずらしても必ずいる。
通学ルートを変えたときは、人通りが普段の通学ルートより多かったためか途中までは全く気にならなくて安心できた…のに、家の近くにその人を見つけて、また怖くなった。

正直、本当に同じ人間なのかと不思議に思ってしまうほど。
…いっそ、幽霊だったらどんなによかったことかしら。


私は、どうしたらいい…?

「れーいこっ、どしたの?」
「…え?」
「お箸、止まってるから。ほら、ちゃんと食べなさい。」
「フフフ、そうね。いただくわ。」
「…………。」

貴子には、詳しいことを話していない。
きっと話せば「家まで送る!」と言ってくれる。でもそれで彼女が巻き込まれたり、嫌な思いをさせてしまったら…それはとても怖いから。

大丈夫、自分でどうにかしてみせる。



そう決意したお昼休みがもうすぐ終わろうという時間、次の授業の準備をしている私に訪問者の知らせ。
ドアを見て、彼の姿を確認してから席を立つ…珍しいこともあるのね。

「どうしたの?」
『今日何時に帰るんだ?』
「……どうして?」

一瞬怯んでしまったのはバレていないかしら。
彼にだけには、何も知られたくない。

『スケット団で8禁ホラー賞に作品を出そうと言っているから、時間があるなら放課後部室に来ないか?』
「あぁ、楽しそうね…行かせていただくわ。」
『じゃあ、またあとで。』

気に留めた素振りもなく淡々と話し、教室に戻っていく彼の背中を見ながら、私は安堵の溜め息を吐く。



彼にだけには、何も知られたくない。



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