山土
□優しくさせて
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「どうして……」
手にしていた器具に目を落とし、一瞬眉を寄せる。
使いたくない。こんなものは。
土方を傷つけ、追い詰める。
山崎だって、土方に無理を強いたという後悔に傷つくのだ。
だが。
「でも、土方さん」
きっと顔をあげて、土方に向かって叫んだ。
「煙草を吸うんならオーラルケアは当然でしょォォォォォォ!」
「うっせぇぇぇ!だとして、それを何でテメェになられなきゃなんねぇんだぁぁ!」
「だって土方さんやんないじゃんっ」
「やってんだろーがァァ!悶駄眠つかってんだろーがァァ!」
両手足を縛られ、床に転がされたまま、土方は全身をくねらせて抗議する。
「二・三回ゆすいだぐらいでヤニは取れないんですよ」
ただでさえ重度喫煙者なのに。
「充分だわっ。グチュグチュグチュグチュやってられっかァァ!嫁を愚痴る姑かァァァッ」
びったんびったんと怒りに跳ねる土方に、やむを得ずと山崎は覚悟を決める。
「なんだ?オイ。その籠」
悲しみに溢れた眼差しが、土方に注がれる。
「これだけは使いたくなかった……」
ギチィィィ、ガッション。
不吉な音は、鉄製を示す。
「おい、山崎」
「提供元は、沖田さんです」
「……ッ!ざけんなっ!!山ざっ、んがぁっ」
その後、
山崎の姿を見たものは居ないとか、何とか。