山土

□お母さん、そのシーツ裏返しじゃないの?え?正しい?いやいやいや、どう見たって裏返しだって!
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マゾなのかと聞かれたら、取り合えず否定することにはしている。

「いやっ!違うって」
「やー、でもよォ。山崎ィ」
「そうそう。山崎は殴られ過ぎだよな」
日に一回は副長の拳を受け止めている。
もはやワザとではないか。
だれが言い出したのかは定かで無いが、そう隊士たちの間で囁かれて久しい。
「運が悪いだけだって」
山崎は顔の前でヒラヒラ手を振って、痛いのなんてみんなヤじゃんと笑った。
「そうだよなぁ。副長ハンパねぇし」
「だからだよ!」
「なんだよ」
「山崎よォ。おめーがそんなに要領悪いたァ、俺には思えねェ。副長に毎回サボりが見つかるのは……」
見つかるようにしてんじゃねェのかい。
しつこくからむ隊士はビシッと人差し指を山崎に突き付ける。
みなの眼が山崎に集中する。
「え〜?」
山崎は困ったと、目を泳がす。
「わざとって言われても……」
ねぇ?
隣の隊士に助けを求めるように、訳のわからぬ同意をうながす。
「お、おお」
「わざと見つかる必要があんのかよ?」集っていた隊士たちの間には否定的な空気が広がる。
「そーなんだよなァ」
そこが解らねェとこなんだよ。
一番しつこく山崎マゾ説を唱えていた隊士も首を傾げる。
山崎は力無く笑って
「運だって」
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