山土

□どんなもんですか?
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「ザキ!ちょっと頼まれてくれんか!」
「あと一刻ほどすれば空きますが、急ぎですか?」
近藤局長に豪快に呼び掛けられた通りがかりの密偵は、やんわりとスルーした。
「退くんはトシ以外には平淡だよね」
勲サミシイ。
呼び掛けた手のもって行き場が無くて、無意味に手を上下させてみる。
「は?そんな事言うの局長ぐらいですよ」
おれは百面相と言われてるぐらいです。
「うん。表情はね……。なんてーか、こう。何かがさぁ」
さかさかと両手を上下させ近藤が身悶える。
「急ぎでないなら行きますよ」
「あ、うん。忙しいとこゴメンネ」
そーいうとこがさ、ホラァ。
さっさと廊下を曲がる山崎の背中に、近藤の呟きははね除けられた。
「トシったら、山崎使いすぎ」
もー。
「なんだよ」
「おわぉう!?」
プリプリしている後ろから、土方が顔をだして驚かされる。
「芸をみせても、やれるバナナはねーぜ」
「え?なんでゴリラ?勲ヒト科だからね」
ホモサピエンス!
主張はあっさりスルーされる。
「悪りいな、近藤さん。山崎はいま使ってる」
「あ……聞いてたの」
ああ、と頷き土方は短くなった煙草を携帯灰皿に押し込む。
「急ぎだってなら、そっちを優先させるが」
「あー、いい。いい。俺のは私用だ」
気を遣うなと笑うと、「そっか?悪りい」とはにかまれた。
こういうところが、なんかしてあげたくなるところだよなぁ。俺も見倣うべき?
こうか?
「なにその上目使い。気持ち悪り」
「え?なんで」
「何がしたいんだか解らねーよ」
つか、用事あったんじゃねぇのかよ。
「うーん。お妙さんの欲しいものを探ってきて欲しかった」
「アンタなに人使ってストーキングしようとしてんだ!」
「だってお妙さん最近顔を見る前に叩き込むんだもん〜!」
「こまれても行け!もう慣れてんだろ!」
「もうブロークンすぎてどこが壊れないかもわからないの!」
「んなことに山崎使ってんじゃねぇよ!」
「だってトシばっかずーるーいー」
「かわいこぶんな!なにそれ」
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