山土

□追憶は山入端
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「まーた、沖田さん。副長に怒られますよ」
河原に寝転ぶ総悟を見つけたのは、山崎退だ。
音も気配もさせず傍らにしゃがみこむ。
「何でぃザキ。てめーサボりかよ」
「ちょっと、おれは非番です。アンタはなにヒトに擦り付けようとしてんの」
市中見廻りをしているハズの総悟はチッと舌打ち、山崎に背を向ける。手を振って邪魔だと示す。
「何が非番でぃ。仕事中だろ」
山崎はわずかに服装や顔つきを変えてある。サイドの髪を後ろでくくって、ちょっとチャラいその辺にたむろっている兄ちゃんの出来上がりだ。
いやー、とか何とか笑って山崎は結い紐をほどく。
「本トに非番ですって」
「どーでもいいやぃ」
「アンタ、何をフテてんですか」
ズバリと言われ、総悟は考えた。
俺ぁフテてんのか?
山崎を見るとちょっとニヤニヤしている。カチンときた。
「何笑ってやがる」
「いやー、年相応でカワイイナ」
が遺言になりそうで山崎は飛び退いた。
「その火器どっから出したの!!」
「フン。こないだド○えもんに会ったんでぇ。ファンだっつったら、快く四次元ポケットを渡してくれたぜ」
「いやいやいやそれカツア……」
暮れ始めの空に、ドゴンと景気の良い音が響いた。
「殺す気ですかあんたァァァァ!」
ススまみれの山崎が吠えたてる。
「チッ。死ねばよかったのに」
「まー。悪魔の子だよ!アンタ本当に悪魔の子だよ」
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